皆様が学生時代に一度は習ったことのある大脳基底核の機能!
でも、いざ臨床にでてみるとその機能って結局のところ運動の何に関わっているの?って悩むことはありませんか?
- 運動制御に関わる
- 運動の開始やストップを調整する
- いくつからのループがある
- 記憶と関係する
などなど…
これら大脳基底核の機能を考えた場合、大脳基底核は沢山の神経核が絡み合っているため、大脳基底核といっても、各部位においてそれぞれ役割や機能も異なります。

つまり、ひとつの運動を切り取ってみた際に大脳基底核のどの部位がどう関係しているのかが少し見えにくくなります。

確かに基底核って勉強したことがあるんですけど、いまいちその機能が理解できなくて~
今回はそもそも大脳基底核がどういった役割を持ち、運動の何に関わっているのかといったことを、まずは基礎的な大脳基底核の5つの核の機能から簡単にまとめていきたいと思います。
- 大脳基底核の構成要素を理解できる
- 大脳基底核の基本的な機能(役割)が理解できる
- 大脳基底核を理解するうえで重要な経路の意味が理解できる
それではスタート!
そもそも大脳基底核とは?

すごく初歩的なのですが、そもそも大脳基底核って何ですか?

大脳基底核とは、脳の大脳皮質と視床や脳幹を結び付けている神経核の集まりであるとされています!
そもそも脳には機能を有する神経核(灰白質)と神経核と神経核を結ぶ神経線維(白質)に大きくわけられ、この大脳基底核は5つの神経核が集まった集合体で、それらをまとめて大脳基底核と呼んでいます。
- 尾状核
- 被殻
- 淡蒼球(内節・外節)
- 視床下核
- 黒質(緻密部・網様部)

これらの核のうち、別の呼び方を見たことがありませんか?

線条体とかレンズ核って名前を聞いた記憶がありますが、それって大脳基底核じゃないんですか?

まさにその2つって大脳基底核の中の複数の核を合わせた名称なんだよ!
- 尾状核と被殻を合わせて線条体
- 淡蒼球と被殻を合わせてレンズ核
という名称があるが、これらは解剖学的名称と機能学的名称として分けらています。
- 解剖学的名称(解剖学的に場所が近い)
- 機能学的名称(元々の機能が一緒もしくは類似)

解剖やら機能やらよくわからないと思いますが、ここで覚えておいてほしいのが、脳画像などを見る際には解剖学的な要素としてレンズ核を、直接経路や間接経路などの大脳基底核がもつ機能を考えた際には線条体を、まずはこの程度でざっくりと分けてイメージしてみてください!
では、これら5つの大脳基底核の各核群は一体何をしているのかをみていきましょう!

尾状核は線条体である被殻とともに大脳皮質からの入力部として作用します。
線条体という名前の通り、多数の線状の細胞橋により結合されており、内包によって尾状核と被殻と分断しているが、本質的には同一であり、発生や機能ともに類似しているのが特徴である。
その中でも、尾状核としての特徴は、前方から頭部、体部、尾部に区分されており、側脳室前角から下角にかけて、側脳室外側部に接しています。
主な機能としては、新しい順序運動の学習に関わる他、
- 頭部:前頭前野機能の制御、直観的思考
- 体部:前頭眼野機能の制御、認知、記憶
- 尾部:サッケード(急速眼球運動)
といった機能を有しています!

主に前頭葉との機能的な連結が強いことがここではわかるね!


被殻は尾状核と合わせて線条体、淡蒼球と合わせてレンズ核とどちらにも区分されるため、機能としてもよく迷うことが多い核でありながら、脳出血部位の好発部位として重要な役割をもつ部分です。
ここに血管栄養しているのが名前の通り【レンズ核線条体動脈】で、出血部位としては視床と合わせて7割近く出血が起きやすい部位となります!
こちらも前述した尾状核と同じく、大脳皮質からの入力部としての役割があります。
その他、重要な点としては四肢の順序運動パターンの自動化と姿勢や運動時の筋緊張を制御、運動技能の潜在記憶学習に関わるとされています!

被殻の機能で最も重要なのは運動機能に大きく関わるということですね!
この尾状核と被殻で構成される線条体は、大脳基底核の機能として重要な経路としてまず大脳皮質から情報を受け取る入り口(入力部)として理解しておくことが重要となります。

主な機能としては被殻に代表されるような運動機能に関与するほか、意思決定の神経過程にも関与します。
この線条体は背側と腹側とわけられ、それぞれを背側線条体・腹側線条体とされているが、解剖学的にその境界線は不明瞭であり、主に入力元で分けられている。
- 背側線条体:尾状核・被殻からなり皮質、視床、脳幹から入力を受ける
- 腹側線条体:側坐核・嗅結節からなり皮質、視床、脳幹以外にも偏桃体、海馬から入力を受ける

今回は大脳基底核なので、背側線条体の話を中心にしています!

淡蒼球は被殻とともに解剖学的には位置が近く、構造上凸レンズ状に形づけられているため、レンズ核と呼ばれているが、両者は発生学的には異なる核になります。
内側:淡蒼球内節
中間:淡蒼球外節
外側:被殻
淡蒼球の主な機能としては運動機能にも直結するが、その他にも辺縁系や視床下部などの情動に関与する部位からの情報と運動の統合過程に重要な役割を果たし,意思決定にも関係するとされています。
臨床的に重要な機能としては運動時のやる・やらないといった部分としての不随意運動にも関与します。
ここでまず理解しておいて欲しい淡蒼球の特徴は内・外節で入力/出力部位が異なるという点です。
入力 | 出力 | |
内節 | 線条体・淡蒼球外節 (抑制性) 視床下核 (興奮性) | 視床 (抑制性) |
外節 | 線条体 (抑制性) 視床下核 (興奮性) | 視床下核 (抑制性) |

こうやってみると淡蒼球は色々な部分と関わってるのがわかるのですが、いまいち順序性というか、どう関わってるのかが理解できなくて…

確かにこれだとよくわからにくいよね~。淡蒼球のことを考える際には階層性としてみることをオススメします!
難しい話はとりあえず、抜きとして淡蒼球の内節と外節はどちらが階層性として上になるのかは、外節→内節の順となります。

まずは淡蒼球外節に情報がおりて、そこから内節にいくってことですね!

そうなんだけど、実はここで覚えておいて欲しいことは、ちょっとまぎらわしいんだけど、外節を通らない場合もあるんだよ!
もう少しこの内節と外節について細かく話をしていくと大脳基底核を理解する上で重要な経路(直接路・間接路)のことを考えていきたいと思います。
ここではまず理解しやすいように淡蒼球が関わる2つの経路から、階層性について考えていきます!
まず、情報の出発地点ですが、それは大脳皮質になります。
大脳皮質からの情報は次に線条体(尾状核・被殻)に入力されます。

そこから大きく2つの経路を介して淡蒼球(内節と外節)に情報をおくるのですが、先ほどの階層性でいうと、外節→内節の順番になります。
しかし、線条体から情報が下りる際に、外節を通らず直接淡蒼球内節におりてくる情報があり、これを直接路といいます。

それに対して大脳皮質→線条体ときた情報が内節に直接行かず、外節を挟んで最終的に内節に情報を送る経路もあって、これを間接路といいます。

ここから考えられることは大脳基底核の機能の中には2つの経路があり、その経路の中で淡蒼球外節を挟む(間接路)ことで、外節を挟まない(直接路)情報とは違いが起こるということです。
この経路について、運動にどう関わってくるのかは別記事でまとめていきたいと思います!
- 直接路:線条体から淡蒼球内節へ情報を送る経路
- 間接路:線条体から淡蒼球外節を経て内節へ情報を送る経路
視床下核は名前の通り視床の下方に位置する核で、この視床下核の最も重要な機能は運動制御(その中でも【運動抑制】)に深く関わるとされています。
そしてこの運動機能に加えて、視床下核と認知・情動を司る大脳皮質との線維連絡もあることで、運動機能だけじゃない部分にも関わることが報告されています。

基底核の機能としてこの視床下核は、情報経路のひとつを担う重要な部分になるのですが、一体どういった部分で関わってくるのでしょうか?

先ほどの経路の中に視床下核がまたプラスされるということですね!

おっ、よく気付いたね!
ただ、ここでこの視床下核が大事といわれる実は大事な部分が隠されてるんだよ!
この視床下核は前述した間接経路の中の線条体→淡蒼球外節→視床下核→淡蒼球内節の部分で運動の抑制に関わります。
そして、実はこの大脳基底核が構成する経路としてもうひとつ、ハイパー直接路といって線条体や淡蒼球外節を通らず、大脳皮質から直接視床下核へ投射する経路があります。

ハイパー!!!
直接路のさらに上をいくってことですか?

名前の由来は難しいんだけど、ハイパーということで、直接路・間接路より前に働くということをイメージしてもらった方が良いかもね!
大脳皮質から直接(線条体を介さず)視床下核へ情報がいき、そこから出力核である淡蒼球内節・黒質網様部へ投射されることで、運動が実行される前に最も早く基底核の働きが起こるということになります。


なるほど~!
視床下核の役割は運動を抑制することだから、運動が起こる前にこのハイパー直接路が働くことで、運動をやらないということを決めてる経路ということですね!

まさにその通り!!
だからパーキンソン病なんかではこの視床下核の活動亢進を伴うことが報告されていたり、逆に障害を受けるとバリズムといった不随意運動のひとつが出現することもよく報告されているんだよ!
- 間接路:線条体から淡蒼球外節→視床下核を経て内節へ情報を送る経路
- ハイパー直接路:大脳皮質から直接視床下核を経て内節へ情報を送る経路
直接路・間接路・ハイパー直接路についてわかりやすく解説した記事はこちら
黒質は中脳に位置しながら、大脳基底核に分類され、その中でも黒質網様部と黒質緻密部の2つ大きくに分けられます。
黒質網様部は情報の中継点として、淡蒼球内節とともに、線条体や淡蒼球外節から抑制性の入力、および視床下核から興奮性の入力を受け、最終的には視床へ抑制性の入力を行うことで随意運動や筋緊張の調整、運動学習などの様々な調整を担っている。
入力 | 出力 | |
黒質網様部 | 線条体・淡蒼球外節 (抑制性) 視床下核 (興奮性) | 視床 (抑制性) |


先ほどの淡蒼球内節と同じ役割なのがわかりますね!

お~、良く気付いたね!そこが大事なポイントになるね♪
この黒質網様部の出力核としての機能に対して、黒質緻密部はまた違った機能を有します。
黒質緻密部は、主に入力部の働き(特に線条体に対して)を調整する調整部で、直接路には興奮性のドーパミンを、間接路には抑制性のGABAという神経伝達物質を送っています。
特に臨床的で運動機能において重要なのがドーパミンで、この黒質緻密部の障害として有名なのが、ドーパミンが欠乏することによって生じるパーキンソン病となり、無動やすくみ足、突進様現象といった運動のON・OFF調整をコントロールできなくなる病気になります。


パーキンソン病って黒質の変性って聞いたことがあります!
やっと基底核の機能とパーキンソンの関係が何となく繋がりそうです。

ここで大事なのが、これら大脳基底核によってコントロールされている全体的な神経回路のことがはじめて理解できる準備ができたことになります。
大脳基底核のまとめ
今回は大脳基底核のことを学んでいく上で重要な基底核を構成する核の機能を中心にまとめていきました。
- 大脳基底核は5つの核群(尾状核・被殻・淡蒼球・視床下核・黒質)で構成される
- それぞれの核の機能だけでなく、それらをつなぎ合わせた神経経路(直接路・間接路・ハイパー直接路)を知る
- 基底核は運動情報の出力に対して主に随意運動や筋緊張、運動学習といった部分に大きく関わる
例えるなら、大脳基底核に分類される5つの核群の機能は食事を作るためのあくまでも食材で、それらがどう組み合わさって調理されるか(どういった神経回路で繋がっているのかを理解するか)でできる料理が異なるということです!
つまりこれはひとつの運動にも当てはめることができて、基底核がどう働くかで、実際に起こる運動がどのように変わるか、臨床場面ではそういったこを考えることが必要になってくるということです!


なんとなくでしか覚えていなかった大脳基底核の機能がかなり整理されたと思います。

じゃあ実際に基底核が運動をどうやって制御しているのかは、また別の機会にまとめていこう!
基底核が関わる運動調節についてはこちら!大脳基底核の経路は運動にどう関るのか?直接路・間接路・ハイパー直接路を図を使ってわかりやすく解説!