運動を司るうえで非常に重要な大脳基底核ですが、実はこの基底核は一つの核として大脳基底核というものが存在するわけではなく、様々な核の集合体として存在し、その機能もそれぞれの核の繋がり(ネットワーク形成)によって構成されています。
それらの繋がりによって運動の調整や眼球運動のコントロール、認知機能や記憶に関する様々な機能に関わる重要な部位になります。
その中でも、大脳基底核の一つとして存在する視床下核ですが、解剖学的な位置関係としては名前の通り、視床の下方に存在する紡錘形の大豆大の核(別名:ルイ核)になります。
視床下核で重要なポイントは、ハイパー直接路・間接路といった運動調整における抑制系ネットワークの中継点となっています。
今回は、この視床下核を脳画像から見つけるためのポイントについてまとめていきたいと思います。
- 視床下核の位置関係を把握できる
- 視床下核を脳画像から探すことができる
- 視床下核の血管支配領域が理解できる
それではスタート!
視床下核の機能とは?
大脳基底核の5つの核の一つとしてとても重要な視床下核ですが、
主な機能としては大脳皮質の各領野から投射があり、その背側部は、大脳皮質運動野から体部位局在を保った入力を受けていることから、運動領域と考えられています1)。
その他にも、前頭前野や辺縁皮質からも入力を受けることで高次機能、情動などにも関わる領域となります。
実はこの視床下核の神経活動をみてみると20Hz~30hで常に発火しており、随意運動に先行して活動変化を起こすとされています。
そして、その投射先は大脳基底核の出力核の淡蒼球内節や間接路経路である淡蒼球外節へ情報を送ることで、抑制機能における大きな役割を担っています。
つまりは、視床下核が働くことで大脳皮質の抑制機構に大きく関わっているということになります!
この視床下核が障害を受けることで運動抑制が困難となり、病態としては運動過多症としてのヘミバリスムが出現するとされています。
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【有料】基底核病変に対する臨床推論とは?運動の問題を3つの経路から考える!- 大脳皮質の各領野からの投射があり運動領域としての機能がある
- 高次機能や情動における機能にも関わる
- 主に基底核の抑制作用として重要な働きがある
では、この視床下核ですが、脳画像で見た際にはどのような位置関係になっているのでしょうか?
視床下核を脳画像からみつける方法
視床下核を脳画像から探していく際には、まずは基底核における全体的な位置関係から把握していく必要があります。
前方からみた冠状面として捉えると大脳基底核全体の位置関係が把握しやすいのですが、視床下核は上記の図の緑色の部分になります。
被殻や淡蒼球の下に位置してるということですね!
そうだね!だから脳画像としてみるべきスライスは被殻や淡蒼球がみえるスライス(松果体レベル)の下のスライスになるということだね!
その中で視床下核が位置するのは脳室の近くになります。
つまり、水平面でのスライスで見た際には図の位置に視床核があります。
この視床下核の障害を見る場合に重要なポイントは、被殻出血例や視床出血例では、出血量の多さとどのスライスまで血腫が広がっているかを把握する必要性があります。
つまり同じ被殻・視床出血でも出血量の多さによっては、視床下核まで障害が及んでいる可能性があるため、被殻・視床出血例での脳画像を見る際には必ず前後のスライスを見ることが重要なポイントとなります。
視床下核を支配する血管支配領域は
脳画像を考える上で重要なのは脳スライスのどの部位にその核があるのかを知ることと、もうひとつは血管支配領域を知ることです。
脳卒中の基本的な問題は血管が破れる脳出血か、血管が詰まる脳梗塞に大別されるため、それぞれの脳部位がどのように血管支配されているのかを把握することで、障害された病態を理解する一助となるのです。
視床下核における血管支配領域ですが、実は2つの血管から支配を受けています。
1つは内頚動脈から分岐した前脈絡叢動脈(こちらは内包後脚に対しても血管支配している)と、もう1つは椎骨脳底動脈から分岐する後脈絡叢動脈になります2)。
どちらも血管自体が細いため、ラクナ梗塞などの小梗塞をきたしやすい領域となるのが特徴です。
- 前脈絡叢動脈:内頚動脈から分岐
- 後脈絡叢動脈:椎骨脳底動脈から分岐
梗塞の場合は2つの血管支配をうけるから視床下核そのもののの機能不全は小梗塞だけでは起こりにくい可能性はありそうだね!
視床下核に関する脳画像のまとめ
- 大脳基底核の位置関係を把握する(被殻・淡蒼球の下にある)
- 脳画像スライスを見る場合は松果体レベルの下のスライスレベル
- 被殻出血や視床出血などでは血腫の広がりを把握するために下のスライスを必ず確認する
- 視床下核は2つの血管支配(前・後脈絡叢動脈)がある
視床下核は大脳基底核の核の一部を担い、大脳皮質の様々な領野からの投射を受け、運動や高次機能、情動などに大きく関わります。
視床下核を脳画像から探す場合は、まずは大脳基底核の位置関係を理解しながら、脳画像スライスでは松果体レベルの下のスライスを見る必要があります。
解剖学的な位置関係を考えた場合にも、被殻・淡蒼球、視床の下に位置するため、脳出血においては必ず血腫の広がりを理解することが必要になります。
血管支配領域では内頚動脈と椎骨脳底動脈のそれぞれから分岐する前・後脈絡叢動脈からの支配をうけるといった特徴もあります。
重要なことはこれら視床下核の単体の障害がでるケースは少ないですが、その他の病態と照らし合わせながら臨床所見を見ることがとても大事になります!
参考文献
1)Nambu A:Somatotopic organaization of the primate basal ganglia. Front Neuroanat 5:26,2011
2)加藤丈夫:不随意運動~診断と治療の進歩~.日内会誌89:650~654,2000
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