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【脊髄編③】α運動ニューロンの機能特性から運動麻痺に対する治療アイデアを考える!

こんにちは、リハビリアイデア(@rehaidea)です。

脳卒中のリハビリを実施していく際に運動麻痺という症状にかなり悩まされます。

そんな時に、運動麻痺に対してはどんな治療が良いのか?どうやったら筋肉が収縮して運動ができるのか?随意運動や分離運動を引き出すためにはどうしたら良いのか?

こんな悩みをもつセラピストは非常に多いのではないでしょうか?

その際に随意運動を司る機能として脳機能を考えることはもちろんのこと、それと合わせてとても重要なのがこの脊髄に存在するα運動ニューロンの機能を理解することです。

随意運動の司る脳機能はこちら!
運動麻痺の種類や評価は?運動麻痺のメカニズムから紐解くリハビリの工夫

リハアイデア
リハアイデア

α運動ニューロンって骨格筋の収縮に関わるのは知ってると思うんだけど、どこまでその機能を考えてリハビリしてる?

サトシ
サトシ

正直あまり考えていないですね…

実はこのα運動ニューロンの機能を紐解くことで臨床場面で活かせる部分が沢山あります。

今回はそんなα運動ニューロンに隠された重要な機能をみていきながら、臨床に活かすためのアイデアをまとめていきたいと思います。

この記事で学べること
  • α運動ニューロンの機能が理解できる
  • α運動ニューロンがどのように働くかが理解できる
  • α運動ニューロンの臨床応用のアイデアが知れる

それではスタート!

α運動ニューロンってどこにあるの?

脊髄には大きく神経線維が主に通る白質と、神経細胞が豊富な灰白質の2つの領域に分けられます。

脊髄にある2つの領域

そしてα運動ニューロンとは灰白質である脊髄の前角に存在し、骨格筋(錘外筋)へ神経線維を送る神経細胞になります。

脊髄機能に関する記事はこちら
【脊髄編①】α・γ運動ニューロンって何?運動麻痺や筋緊張に関わる脊髄機能を簡単に解説!

脊髄前角細胞

ここで知っておいて欲しいことは骨格筋を働かす(いわゆる随意運動に関わる)名称は、大きく2つに大別されます。

2つの運動ニューロンの呼び方
  • 上位運動ニューロン:脳から脊髄前角細胞まで
  • 下位運動ニューロン:脊髄前角細胞以下の骨格筋まで
運動ニューロンの違い

つまり脊髄前角細胞は上位運動ニューロンに分類され、この上位運動ニューロンのどこかで障害を受けると錐体路徴候としての運動麻痺や痙性、筋力低下、反射異常などが生じます。

上位運動ニューロンの中にあり、骨格筋に対して情報出力をするα運動ニューロンをいかに働かせるかが、臨床場面における上記の錐体路徴候に対するアプローチに繋がるかが理解できます。

リハアイデア
リハアイデア

ここで大事なことはα運動ニューロンが直接障害を受けてなくても、上位運動ニューロンのどこかで(例えば脳卒中などで皮質脊髄路が損傷を受けると)障害があれば、結果的にα運動ニューロンが働かないということです!

そして脊髄は頸椎~腰椎にかけてそれぞれ髄節という区分をもち、それぞれの脊髄(Cの〇番やLの〇番といったレベル)の前角に、髄節支配に応じた筋肉に刺激を送る前角細胞があります。

脊髄全長の図(頚髄~仙髄)

さらに、この脊髄の前角細胞内でも身体への支配領域が異なるといった特徴もあります。

リハアイデア
リハアイデア

これを体部位局在っていうんだよね!

サトシ
サトシ

それ確か脳の領域でもありましたよね!

随意運動に関わる脳の体部位局在はこちら!
脳画像から一次運動野を探す方法とは?運動麻痺の評価の最初の一歩!

脊髄前角細胞内での体部位局在の配列は、近位(身体の中心部に近い股関節や肩関節)支配のニューロンが内側に,遠位(身体より末梢の手足)支配のニューロンが外側に並ぶとされています。

さらに,前角の背側には屈筋群支配ニューロン,腹側には伸筋支配ニューロン
配列する構造になっているのが特徴です。

脊髄内の体部位局在
リハアイデア
リハアイデア

ここはあくまでもこれらを臨床応用するというよりは、脊髄内がどういった解剖特性を持っているかを理解しておいてね!

もうひとつ、このα運動ニューロンについて重要なポイントは脊髄前角内に一つα運動ニューロンが存在するということではない点です。

サトシ
サトシ

教科書などではひとつだけが書いてあることが多くて、てっきりひとつの神経細胞があるだけかと思いました。

リハアイデア
リハアイデア

あれはわかりやすいように書いてあるだけで、重要なのはこのα運動ニューロンの集まり(集合体)が脊髄前角にあるということなんだよね!

脊髄前角にはα運動ニューロンの集合体としての名称がついており、それをニューロンプールといいます。

ニューロンプールとは?
  • 人間の身体には約1000万の感覚ニューロンと200億の介在ニューロン(一般に知られるニューロン)、500万の運動ニューロンがあると言われている。
  • ニューロンは個々で活動するだけでなく、空間上の近傍性を持つ局所的なニューロンが集合して活動する場合があり、このニューロンの集合をニューロンプールと呼ぶ。
  • ニューロンプールはグループを単位として、ニューロンプールとしての機能を持つことになり、ニューロンプールは脳や脊髄のいろいろな領域に散見され、よく知られるものとして α運動ニューロンプール(alpha mortor neuron pool:筋組織に直接接続される下位運動ニューロンにおけるニューロンプール)がある。
リハアイデア
リハアイデア

難しく書いてはあるんだけど、簡単にいうと脊髄前角内にはこのニューロンの集まりがあり、その集まりのうち、いくつのニューロンが発火できるかが筋収縮力に繋がったりするということです!

α運動ニューロンプール

では、このα運動ニューロンですが、具体的に体部位局在をもち、そして集合体をもつことで実際の身体運動に対してはどういった情報を送っているのかについてみていきたいと思います。

α運動ニューロンって何をしているの?

α運動ニューロンは主に脳からの指令を受けることで、骨格筋を収縮することが最も大きな機能になります。

脳だけじゃない反射的要素に関する記事はこちら!
【脊髄編②】伸張反射をどう臨床に活かす?機序やメカニズムをわかりやすく解説!

α運動ニューロンからの情報出力による骨格筋収縮までの流れは以下の通りです。

脳・筋肉からの指令を受ける

α運動ニューロンには脳の一次運動野~皮質脊髄路を介した運動情報もしくは反射といわれる筋紡錘からの求心性情報を受けることで活動を起こす

髄節毎の神経線維に情報を乗り換える

α運動ニューロンからの出力情報が各分節の支配筋に対する神経(筋皮神経や大腿神経など)に情報を乗り換える

骨格筋に繋がり、アセチルコリンを放出

α運動ニューロンからでた運動情報は骨格筋(錘外筋ともいう)にある神経筋接合部に接合し、そこから神経伝達物質であるアセチルコリンを放出する

骨格筋が収縮する

そして、放出されたアセチルコリンは骨格筋に作用することで、活動電位が発生し、アクチンとミオシンのティッピングが起こることで筋の収縮活動が生じる

リハアイデア
リハアイデア

つまり骨格筋の収縮にはα運動ニューロンの活動が必須で、このα運動ニューロをいかに発火(活動)させるかが重要なポイントになりそうだね!

サトシ
サトシ

そうなると先ほどのニューロンプールをいかに効率的に沢山活動を起こせるかが、運動麻痺や筋力低下の治療に対しては有効になるということですね!

α運動ニューロンはどうやって働くの?

そう考えた場合にα運動ニューロンが活動する際の特性についてまとめていきたいと思います。

先ほどのα運動ニューロンの集合体であるニューロンプールについて少し触れましたが、これは脊髄前角内にあるα運動ニューロンの集合体になります。

もうひとつ重要な要素に、一つのα運動ニューロンがどれだけの筋肉(筋線維)を働かせられるかという運動単位のことを考える必要があります。

サトシ
サトシ

ニューロンプールはα運動ニューロンの総数のことで、運動単位は一つのα運動ニューロンが支配する筋線維の数ということですね!

運動単位とニューロンプール

臨床場面においてはいかにこの運動単位を働かせられるかが、α運動ニューロンの働きを考えた場合に重要となり、その際に知っておいて欲しいことはα運動ニューロンは働かせる3つのポイントになります。

α運動ニューロの活動を起こすための3つのポイント
  • 運動単位の動員:recruitment(リクルートメント)
  • 発火頻度の調整:rate coding(レートコーディング)
  • 運動単位の活動調節:synchronization(シンクロナイゼーション)

サトシ
サトシ

これ学生の時にテストで暗記しまくった記憶が…!(笑)
でも臨床にでたら忘れてしまいました。

リハアイデア
リハアイデア

まずはそれぞれの特性についてみていこう!

運動単位の動員:recruitment(リクルートメント)

運動単位の動員とは言葉そのままに、どれだけ沢山の筋線維が収縮に関わるかということです。

リハアイデア
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つまり、運動単位数の動員が多ければ多いほど収縮力に反映して、力が発揮されるということだね!

この収縮の動員は、弱い随意収縮では小さな運動単位が繰り返し活動し、収縮を強めると、別の運動単位が参加してきます。

このように活動に参加する運動単位が増加する現象運動単位の動員(recruitment、リクルートメント)といいます。

運動単位の動員:recruitment

筋肉の特性を考えた場合によく聞くのが、収縮のはじめの段階では興奮閾値が小さい小型のニューロン(遅筋線維:S型)が発射し、収縮力が増強するに従い大型のニューロン(速筋線維:FR型やFF型)が動員されます。

そして、弛緩する場合は興奮閾値の高い大きな運動単位から順に活動を停止していくため、この筋肉の特性によって起こる運動単位の動員をサイズの原理といいます。

発火頻度の調整:rate coding(レートコーディング)

先ほどの運動単位の動員では、筋活動に必要な筋線維の数(運動単位)が徐々に増えていくということですが、時には一気にパワーが必要な場面も遭遇します。

リハアイデア
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そうなった時にいちいち運動単位の動員だ~ってゆっくり筋活動が立ち上がってたら遅いよね?

サトシ
サトシ

確かにそれでは瞬発的に大きい力がいるような状態ではα運動ニューロンが効率的に働かないですもんね!

リハアイデア
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そもそも筋肉には【全か無かの法則】というものもあって、ある一定の刺激量が閾値に達しないと活動しないという特性もあるからね!

その際に重要なのが、刺激頻度の増加に伴い、単収縮が弛緩する前に次の収縮が生じる強縮と呼ばれる状態が生じる筋の特性があります。

この筋の単収縮ではなく強縮が起こるためには、脳からの筋への命令を送る頻度を増やす(調整する)必要があります。

このように生体内で運動ニューロンの発火頻度が増加することに、より大きな筋張力が発生することを運動単位の発火頻度の調節(rate coding)といいます。

発火頻度の調節:rare coding
リハアイデア
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つまり脳からの運動指令が課題や運動の必要性に応じて沢山でるように調整するということになるね!

運動単位の活動調節:synchronization(シンクロナイゼーション)

先ほどの運動単位の動員と発射頻度の調整によって、必要な運動課題に応じて必要な筋が、必要な力で発揮されることで筋自体の活動量を調整しています。

しかし、実際の運動場面ではひとつの運動単位のみが働くわけではなく、ニューロンプールに存在する様々な運動単位をもつα運動ニューロンを発火させる必要があります。

サトシ
サトシ

量があれば質もいるってことですよね?

運動の際には課題特性に応じてより複数の運動単位が動員される活動が同期化(シンクロ)される必要があります。

リハアイデア
リハアイデア

水泳のシンクロナイズドスイミングと一緒でチーム全体が動きとして一致しないと綺麗なパフォーマンスにならないということと一緒だね!

サトシ
サトシ

なるほど、まさに運動単位たちの競演ですね!

このように運動単位の動員が同期化される、つまり活動時相(活動する時期)が一致することにより、大きな筋張力を得ることができることを運動単位の活動調節(synchronization)といいます。

運動単位の活動調節:synchronization

この運動単位の活動調節によって筋自体の活動の質を高めていることになります。

つまり、α運動ニューロンの活動を考えた場合にはこれら3つの発火特性を考えた筋活動を意識することが必要となるのです。

サトシ
サトシ

知識としてはある程度理解できたのですが、これを臨床応用しようとなると…

リハアイデア
リハアイデア

そうだね!ここからは先ほどの知識をどう臨床に活かすか、私が考えるα運動ニューロンに対する治療介入のポイントをお伝えするね!

α運動ニューロンの機能をどう臨床に活かすの?

このようにα運動ニューロンは、脳卒中における運動麻痺の問題や筋力低下、廃用症候群などを考えた場合にも非常に重要な部分になります。

その際に3つのα運動ニューロンの発火特性を考えながら治療展開を進めていく必要があります。

この3つの特性を筋活動で考えた場合に、実際の筋発揮が相対的に低いところ、つまりそれほど力がいらない場面では運動単位の動員のrecruitment(リクルートメント)の働きが優位に働きます。

それに対して、筋活動が高い、筋発揮がより強く必要な場合は、発火頻度の調整のrate coding(レートコーディング)が優位に働きます。

弱い筋収縮の時には主に運動単位の動員が中心となり、強い筋収縮へ移行するにつれて発射頻度の上昇が大きく関与する1)。

Milner-Brown(1973)

そして、より複雑で滑らかな動きを必要とする際や、より多くの筋活動が参加する場合には、働く運動単位の数をシンクロさせるための運動単位の活動調節であるsynchronization(シンクロナイゼーション)が必要になってくるのです。

では、これら筋活動の量と質を求めるために、セラピストとして治療場面において意識することやできることは何なのでしょうか?

運動単位の動員のrecruitment(リクルートメント)を考えた場合には徐々に筋活動が増えていくことを考えれば、少ない運動負荷から徐々に負荷量を増やしていくことが重要です。

つまり抵抗量や重力量を足したり、引いたりコントロールすることで過負荷を防いだ中でのトレーニングが必要になってきます。

リハアイデア
リハアイデア

その際には、運動範囲や抵抗をかける位置、運動実施の時の姿勢・肢位を細かく考えながら治療介入することが望ましいね。

運動単位の活動調節であるsynchronization(シンクロナイゼーション)は、脳からの情報出力が関与するため、より活動を引き起こしたい筋に対して、視覚的に意識を向けることや、徒手的刺激を筋にダイレクトに刺激を促すことも重要になってきます。

さらには運動前の運動イメージを想起させることで、運動情報に関連した一次運動野ないし運動前野などの高次運動野の活動が引き起こされるので、実際に実施する動作を模倣したり、アシストすることで運動をまずは実施することも重要となります。

そして最後に運動単位の活動調節であるsynchronization(シンクロナイゼーション)を考えた場合に、PNFのような複合運動での運動連鎖や筋活動パターン(シナジー)を働かせられるような歩行やリーチ動作などの多関節運動を用いる課題特性を意識し、運動を実施することがとても大切な要素になってきます。

リハアイデア
リハアイデア

そこで私はよくこうやって後輩たちに指導することがあるし、自分自身こころがけていることがあります。

やってみせ言って聞かせてさせてみせほめてやらねば人は動かじ

山本五十六
α運動ニューロンを働かせるための心得!

やってみせ:まずは必要な運動をこちらがみせてみる(下準備)

言って聞かせて:今から実際に行う運動をイメージ(想起)させる

させてみせ:α運動ニューロンを直接働かせるためには必ず随意運動を実施してもらう必要がある(他動運動ではダメ)

ほめてやらねば:実施したことに対するフィードバックを与える(ほめる事での側坐核の活性化)

人は動かじ:上記を意識させないと、骨格筋を働かせるα運動ニューロンが働かない

リハアイデア
リハアイデア

ふざけてるわけじゃなく本当に大事なことだからね~

サトシ
サトシ

私もしっかり臨床場面で意識しながらα運動ニューロンを働かせてみます!

α運動ニューロンに関するまとめ

α運動ニューロンに関するまとめ
  • α運動ニューロンは脊髄前角に存在し、そこには支配筋に対するニューロンプールとして複数のα運動細胞が存在する
  • α運動ニューロンを考える場合には、その先の下位運動ニューロンである運動単位(1つのα運動ニューロンがどれだけの筋線維を支配しているか)を考えておく必要がある
  • α運動ニューロンの活動を起こすための3つの発火特性を考える
  • 実際に骨格筋を働かせるための随意運動とそのための負荷や抵抗、課題特性を考慮する

少なくとも随意運動を引き出す際にはこれらα運動ニューロンの特性や働きを理解した上での治療介入がとても重要になってきます。

リハアイデア
リハアイデア

知らずしてただ筋トレするより、どうやってそこの筋を働かせようか、そのために何が必要かを考えることってめちゃくちゃ大事だからね!

サトシ
サトシ

はい!まさに知識を臨床に繋げるための思考方法ですね!

今回は脊髄機能としてα運動ニューロンの特性を例に、随意運動に必要な考え方をお伝えしました。

まだまだ脊髄機構は知らないといけないことが沢山あるので、また様々な情報を今後もアップしていきたいと思います。

Twitter(@rehaidea)でもブログ更新情報などを配信中ですので、是非当ブログと合わせてフォローもお願いします!

それではまた~!

引用文献

1)Milner-Brown HS, et al.: Changes in firing rate of human motor
units during linearly changing voluntary contractions. J Physiol
(Lond.), 230: 371-390, 1973

参考書籍

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