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半側空間無視のリハビリに必要なメカニズムを徹底解説!無視ではなく注意障害という観点から!

こんにちはリハビリアイデア(@rehaidea)です。

臨床場面でもよく遭遇する半側空間無視ですが、皆様はこの半側空間無視に対して普段どのように関わりをもっていますか?

半側空間無視と聞いたらどんなイメージを持ってる?

リハアイデア

カスミ

左側をみなくて、ずっと右側をみているようなイメージですかね。あまり臨床でもみたことがないのですごく大雑把ですが(笑)

臨床場面でみる半側空間無視の症状で考えられるのは・・・

  • 片側を無視する
  • 片側に注意が向かない
  • ずっと同じ方向を向いている
  • 片側の手や足をよくぶつける
  • 左側の障害が多い
  • ADL場面で片側のものを見落とす …など

こういった現象を思い浮かべるのではないでしょうか?

じゃあ、その半側空間無視に対して普段の臨床ではどうやってアプローチするの?

リハアイデア

カスミ

え~、左側から話しかけるとか左側を向かすとかですかね。正直、半側空間無視にはどうアプローチしていいかがわからないのが本音です。

半側空間無視に関してどのようにアプローチするのかって、臨床場面でも本当に難渋することが多いと思います。

僕も昔はよくSTさんとかに頼っていたな~!

リハアイデア

実はアプローチをするにしても、片側の空間をみない・無視するといった『半側空間無視』という症状として捉えるだけではダメなのです。

そして、そもそもなぜこの半側空間無視が左に多いのかといった病態把握も非常に重要になってきます。

つまり、その症状が脳内でどのように起こっているのかの細かな病態把握や、そのメカニズムを知らないとなかなか直接的な治療に繋がらないのが現状なのです。

そして近年は、この半側空間無視に対するメカニズムの解明が脳科学の発展によって、より明確になってきて、治療的介入もある程度の指標ができてきているようなのです。

カスミ

やはり、最新の知見などは勉強しないといけないですね。

今回は臨床で難渋するであろう高次脳機能障害のうち、半側空間無視についてその病態を注意という側面からまとめていきたいと思います。

まずは、基本的な病態を知ることが治療における第一歩となっていくのです。

それではスタート!

半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)とは

そもそも半側空間無視とは何なのか?

実は半側空間無視の研究はずっと昔からされていて(歴史的には1940年代~)、その当時は頭頂葉による空間情報の障害として「頭頂葉症候群(Posner 1987)」と捉えられていました。

しかし、頭頂葉の病変がないにも関わらず半側空間無視の症状がでてきたり、その症状も個別性があり、この部位だけの問題ではないということが報告されるようになってきました。

確かに、臨床上なんでこの人半側空間無視ってでるのって思う時あるもんな~。

リハアイデア

そういったことから、頭頂葉症候群という考え方が見直され、半側空間無視の一般的な定義としては、

大脳半球損傷の対側に提示された刺激を報告したり刺激に反応したり、与えられた刺激を定位することの障害 (Heilmanら1993)

と、報告されるようになりました。

そして、それは左側の脳の損傷に比べ、右側の脳の障害によって強く症状がみられやすく、頭頂葉や前頭葉に障害部位が多くみられるということが報告されるようになってきました(Molenberghs ら、2012)。

Molenberghs P,et al:Is there a critical lesion site for unilateral spatial neglect? A meta-analysis using activation likelihood estimation.Front Hum Neurosci. 2012

つまり、それらをまとめると半側空間無視とは、

半側空間無視とは
右半球の頭頂葉・前頭葉の損傷後に生じやすい神経学的症候で、無視空間に対して方向性に注意を向けたり、それを維持することが障害を受けた状態。

を指すことがわかります。

なので、半側空間無視を呈した症例さんを見たときに「あ~、この人は左空間がうまく認識できていないんだろうな」と解釈することができ、結果「左側をみない(無視する)障害」として普段の臨床場面でも捉えられるのだと思います。

しかし近年では、脳機能に関する様々な研究データの報告や、脳の可視化等により、半側空間無視に対する考え方も少し変わってきているのが現状なのです。

そして実際には、

半側空間無視は「注意ネットワーク症候群」として再考され、受動的注意の低下が病態の根源(Corbetta et al 2011)

と報告されるようになってきました。

つまり空間として見えない状態ではなく(あくまでも無視している状態で)、状況に応じたら能動的(自分から)には認識できる可能性があるというのが一般的な解釈になります。

そして、あくまで病態の本筋は、外部からの刺激に対する受動的な部分での注意の切り替えが行いにくい、といった障害になってくるのです(ただ重度の症例の場合は、もちろん能動的な部分での障害も呈します)。

つまり、半側の空間は無視するのだけど、その原因は注意を向けるネットワークが問題であり、そのネットワークを新しく組み換えることができ、能動的なものよりむしろ受動的な注意配分が動作の中で自由に行えれば良いというわけなのです。

なので、この2つのことを理解することができれば、実は半側空間無視の治療介入していくためのヒントが隠されているということになるのです。

リハアイデア

カスミ

う~ん、そうはいってもいまいちイメージしにくいですね。

注意ネットワークとか、受動的or能動的注意って一体どういうことなんですか?

だろうね(笑)。文章でこう書かれても中々イメージしにくいのが現状だね。

リハアイデア

それでは、もう少し具体的に半側空間無視の病態をみていきましょう!

半側空間無視に関わる注意障害とは何を指すのか?

まずは注意ネットワークを知る前に、そもそもの注意というものが何なのかについて少し考えてみよう。

日常生活場面を想像してもらえれば良いのですが、注意といっても、何かに注意を向けたり、同じところに注意を持続させたり、他に注意を逸らしたり、様々な場面で注意という言葉を用いると思います。

そもそも『注意』と言っても実はその言葉の概念の中では、いくつかの要素に分かれており、それぞれの要素に特性があるとされています。

カスミ

えっ、じゃあ注意障害といっても色んな注意の問題がでるっていうことですか?
ここでは、まずは注意という言葉そのものについて少しまとめてみよう!!

リハアイデア

以下は認知心理学的な注意の考えになりますが、注意の構成要素は大きく4つに分けることができます。

注意の構成要素

注意を構成する4つの要素
  1. 注意の転換
  2. 注意の選択
  3. 注意の持続
  4. 注意の分配

これら4つをまとめて『注意の制御機構』と位置づけられています。

注意といっても臨床症状では集中できなかったり、切り替えられなかったりと様々な注意の問題がでてくるもんね。

リハアイデア

カスミ

確かに。でもなんだかまた色々難しい言葉が・・・
注意
ここではまずは注意という言葉の概念的な考えになります(注意の種類といったイメージ)。後程でてくる受動的・能動的注意といった言葉は、それを大きく捉えた形になるので(注意の方法といったイメージ)、少し分けて考えてくださいね。

では、これら4つの注意に関する言葉を、もう少し簡単にみていくと、

注意を構成する4つの要素
  1. 注意の転換:今起こっていることから他に切り替える
  2. 注意の選択:複数の中から「これに決めた」と選択する
  3. 注意の持続:一つのことに集中する
  4. 注意の分配:「●●しながら□□をする」のように2つのことを同時にする

カスミ

こうやって噛み砕くと、なんとなく注意にも種類があるということがわかりますね。
そうだね。だから注意の障害といってもどういった注意に障害があるのかは臨床場面ではしっかり判断しないといけないんだね。

リハアイデア

じゃあ、これを臨床的な場面での食事動作の中でみていくとしてみよう。

そうすると・・・

注意を食事場面で考えると
  1. 注意の転換:ご飯を食べていたが、おかずに変える
  2. 注意の選択:どれから食べようか考え、好きなものから食べる
  3. 注意の持続:部屋に入ってきた看護師さんに気を取られない
  4. 注意の分配:同室者の方と話しながらご飯を食べる

といったことになります。

この中でどういった注意機能に障害がでているのかは、リハビリ場面よりも普段の病棟ADLをみている看護師さんから情報収集することが多いよ!

リハアイデア

半側空間無視における注意障害の問題とは?

じゃあ、これら注意の要素のうち半側空間無視には何が関わってくるのかということですが、最も大きく関わってくるのが『注意の転換』『注意の選択』になります。

カスミ

何故、この2つなんですか?

日常生活において、我々は膨大な情報の中で生きています。

それらすべての情報に注意が逸れてしまったら、それこそ何にも集中できません(このブログを書いている私はブログを書きながらも、部屋の隅にあるマンガに目がいったり、テレビに目がいったりで注意が逸れまくっていますが・・・笑)。

つまり、今必要な注意を向ける対象が何で(選択)、それをどの場面でどう切り替えるか(転換)を日常生活場面では常に繰り返したり、コントロールしたりするわけです。

では、半側空間無視の方の場合を考えると、いくら刺激をいれても、ある特定の空間にはその注意を切り替えること(転換)が苦手だったり、そもそも半側に対して意識的に注意を向けること自体(選択)が難しい状態なのです。

それに対して、ある課題に対してずっと、集中し続けること(持続)や2つの課題を同時並行で遂行していく(分配)などは、どちらかというと、ワーキングメモリーに関わる前頭葉機能が主として働く場合があるので、半側空間無視独特の病態というよりかは、脳機能全般的な影響としての症状と捉える方が良さそうです。

半側空間無視における注意ネットワーク障害という考え方!

こういった病態から考えられていたのは、空間性注意の神経ネットワーク説方向性注意障害説が半側空間無視における重要なメカニズムだとされていました。

以下では、それぞれの説について、簡単にまとめていきたいと思います。

まず半側空間無視を知る上では、何故注意障害が起こってくるのか、何故左側に多いのかについて理解することが必要になってきます。

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