こんにちはリハビリアイデア(@rehaidea)です。
運動麻痺の評価と言えば・・・
おそらく皆さんの臨床場面において「運動麻痺の評価は?」と聞かれると真っ先にでてくるのが、このブルンストローム・ステージ(Brunnstrom stage:Brs)ではないでしょうか。
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学生時代から、当たり前のように習ってきたブルンストローム・ステージですが、臨床現場にでていて、これって治療に使えるのかなって思う時はないですか?
臨床経験のあるセラピストであれば、評価の仕方やその意義や目的なんかは何となく頭では理解していると思いますが、ただ評価として数値をとるといったこともあるのではないでしょうか?
サトシ
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しかし改めて運動麻痺って何なのか、そしてそれを評価するためのブルンストローム・ステージってどういったものなのかを勉強していくと、患者さんが呈する運動麻痺の本質を理解できる部分が多くあります。
今回はこのブルンストローム・ステージについてその目的や評価方法、臨床につなげる知識を含めたことをお伝えしていきたいと思います。
目次
ブルンストローム・ステージってそもそも何
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ブルンストローム・ステージは別名ブルンストローム・リカバリー・ステージ(Brunnstrom recovery stage)ともよばれている運動麻痺を評価する際に一般的に用いられる評価バッテリーになります。
その起源は古くスウェーデンのシグネ・ブルンストローム(Signe Brunnstrom)により考案された評価法になります。
この評価方法の特徴として、名前にもあるようにリカバリーということで、回復の程度を表す指標として用いられるのが一般的です。
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つまり、脳卒中における運動麻痺は障がいの程度や発症時期にも影響を受けると思いますが、ブルンストローム・ステージを基に考えた際には回復の程度には一定の法則性があるということなのです。
どういうことかというと、脳卒中後による運動麻痺の回復過程を段階的(例えば1は〇〇、2は▲▲みたいな感じで)に判断することで、運動麻痺の重症度を捉えやすくしていることが挙げられます。
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引用元:Li S et al:New insights into the pathophysiology of post-stroke spasticity.Front Hum Neurosci (2015)
その回復過程における段階として、脳卒中発症による運動麻痺の初期症状として、第一段階は動き自体がみられない状態(弛緩性)からはじまります。
上の図で行くとⅠのFlaccidityの部分にあたります。
Flaccidityは弛緩という意味で、このグラフをみてわかるように、縦軸のSpasticity(痙縮)がない(もしくは、低い)状態で、かつMotor control(運動コントロール)も低い状態なのがわかります。
そして、脳卒中後の片麻痺患者さん特有の運動パターンである共同運動や連合反応といった動きが徐々に生じるとしています。
上の図の、ⅡもしくはⅢにあたる部分になります。
ⅡのSynergies、Some spasticityとは、前者をシナジーといい、ある刺激に対して決まったパターンで動くいわゆる共同運動としての動きがみられる状態で、後者は痙縮が少しずつ出現してきた状態を表します。
Ⅲは痙縮がMarked(形成)された状態で、臨床的にいうところの上肢の屈曲パターン、下肢の伸展パターンがこれにあたります。
そこから各関節が分離した動作(Ⅳ、Ⅴ)へと移行し、最終段階では正常な動作へ近づいていく(Ⅵ)というのがブルンストロームでいうところの一連の回復過程になります。
上の図のⅣでは、シナジー(共同運動)から徐々に動きが分離して、痙縮も軽減していきます。
そして、ⅤではSelective control(選択的運動)が現象としてみられてきます。
そして、最後にⅥのIsolated /coordinatede(独立した / 協調的な動き)へと変化していきます。
- Ⅰ(Flaccidity):弛緩性(痙縮がなく、随意性もみられないもしくは低い状態)
- Ⅱ(Synergies、Some spasticity):共同運動(ある刺激や運動に対して決まったパターンの筋活動が起こる状態)
- Ⅲ(Marked spasticity):痙性パターン(運動に伴って他の部位が連動し反応が関節運動として現れる状態)
- Ⅳ(Out of synergy、Less spasticity):分離運動(パターン運動からの脱却、痙性が抑制されてきた状態)
- Ⅴ(Selective control of movement):選択的運動(各関節を意識的に、自由に動かせる状態)
- Ⅵ(Isolated /coordinatede movement):独立・協調運動(運動課題に応じてスムーズに各関節を動かせる状態)
教科書などでは、こういった回復過程を中枢性の運動麻痺として、末梢性による運動麻痺と区別しているものもあります。
そして、その評価により得られた運動機能をⅥ(6)段階で評価することで、客観的に誰が見ても運動麻痺の程度がわかるように、よく臨床場面なんかでは頻繁に用いられます。
しかし、現在では学会などではこのブルンストローム・ステージによる評価は減ってきている印象があります。
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現に、海外なんかではこれだけでは運動麻痺の評価としては用いず、別の評価方法が主流のようです。
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話は戻しますが、このブルンストローム・ステージを回復過程という側面で捉えた場合、臨床をみていて感じるのが、必ずしも運動麻痺を呈した方がみんな発症初期から動かなくなるわけではないことです。
サトシ
運動麻痺を呈していても発症後すぐにでも上・下肢が動く人もいれば、全く動かない人もいたり、上手に物が持てる人もいれば、上手く手があがらない人など、その症状は患者さんそれぞれによって大きく違います。
なので、あくまでも運動麻痺を呈した場合にはブルンストローム・ステージのような回復現象の中でも、どういった症状が初期にみられるかは個々でしっかりと評価し、判断する必要性があります。
ここまでのことを整理すると、運動麻痺の評価に用いるブルンストローム・ステージは、運動麻痺の回復程度を表す指標でありますが、その回復過程自体の経過は人それぞれ違うといったことになります。
つまりみるべき点は、麻痺した手足の現象をみるだけでなく、それがなぜ起こっているのか、そしてどういったことが原因で起こっているかという原因分析が必要になってきます。
そういった意味でもこのブルンストロームステージでみられる麻痺側の現象を脳の神経メカニズムと合わせて解釈することがとても重要になってくるのです。
運動麻痺回復に関する脳内メカニズムはこちら!
運動麻痺回復のステージ理論とは?運動麻痺回復の脳内メカニズムを徹底解説!そして、このブルンストローム・ステージは治療的要素に立った視点でみてみると、実はその捉え方が大きく変わってくるというのが、臨床的な考え方になるのではないでしょうか。
サトシ
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どういうことかと言いますと、回復過程としては連合反応などの動きが起こっても良いものと判断するか、それは起こしてはダメだと判断するかの違いになります。
もう少しわかりやすいように、ここではある2つの比較する治療内容を「治療法A」と「治療法B」と仮定します(特定の治療手技がそうといっているわけではありませんので、ご理解ください)。
- 治療法A:連合反応や共同運動パターンは誤学習を生むという考え方から、そういった反応(例えば連合反応など)は出さない方が良い。
- 治療法B:通常回復過程の中で起こり得る問題なのだから、いかにそれ(連合反応など)を早期に脱却するか(つまり出ても良い)を考える。
といった、2通りの考え方があるのではないかと思います。
なので、そういった形で運動麻痺を捉えると回復過程で起こる反応を「良し」とするのか、「ダメ」とするかは、それをみるセラピストによって、若干捉える印象が違うということになります。
これは、どちらが正しい・正しくないというわけではなく、自分たちがやる治療が何を目的に、そして何の動作を得るためにやっていることなのかを理解する必要があります。
そのために必要な評価の一環として、ブルンストローム・ステージによる反応が良い反応なのか、良くない反応なのかを評価できることが、臨床場面では非常に重要になってくるということです。
サトシ
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そのためにも、運動麻痺による評価を理解することと合わせて、実は運動麻痺そのものの概念を、あらかじめしっかり理解する必要があります。
では、何故ブルンストローム・ステージのような運動をみる評価方法が臨床で活用されているのか。
その目的について考えてみたいと思います。
ブルンストローム・ステージの本当の目的は
ブルンストローム・ステージの目的を理解する前に、まずは運動麻痺について、少しおさらいしていきましょう。
運動麻痺とは随意運動障害ということで、自分の意思で筋肉を自由に動かせなくなったことを指します。
その結果、筋肉の働きによってもたらされる、個々の関節運動が自由に(自由ということをもう少し具体的にすると、単関節運動とも捉えられる)動かすことができない現象のことを、運動麻痺と一般的に呼んでいます。
運動麻痺についてもう少し詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
運動麻痺の種類や評価は?運動麻痺のメカニズムから紐解くリハビリの工夫
こういった運動麻痺という要素に対して、①患者さん自身が意識して単関節運動が行えるのか、②それが今は回復段階でのどのレベルなのか、③今度どのように変化していくのか、の3点をみているのが、このブルンストローム・ステージの目的になるのです。
- 意識した単関節の分離運動が行えているか
- 運動自体が回復段階でのどのレベルなのか
- 今後、運動がどのように変化していくのか
そう考えると、ブルンストローム・ステージとは、運動麻痺によって関節運動を単独に動かせなくなったことを段階づけて、今は動くのか動かないのかを評価(ステージⅠかⅡレベル)し、次に全体として動くかどうかを評価(Ⅲレベル)し、その次に独立して単関節運動が各姿勢によってできるかを評価(ⅣかⅤレベル)していきながら、症状を把握するための、一つの方法論になるのです。
先程の目的の話でいくと、ブルンストローム・ステージは運動麻痺の評価に用いられ、それをみる目的としては、運動麻痺の程度を知ることと、運動麻痺の回復過程を知ることの大きく2点として考えることができます。
ただこれはあくまでも、ステージ毎に分類しただけなので、実はブルンストローム・ステージだけではその回復過程を本当に追えるかどうかという点では少し疑問が残ります。
サトシ
それは、ブルンストローム・ステージによる運動パターンの改善や変化が、筋肉の収縮が反応するレベルから、共同運動や連合反応からの分離運動へと変わってきた、というような考え方に基づいていますが、臨床的な部分では必ずしも評価方法に応じた回復過程を正確にたどれているわけではないということになります。
そして、単関節運動ができたか・できてないかが主な判定基準となるため、筋出力に対してある程度の質的評価にはつながりますが、動作によって生じる筋出力に対する量的評価には適していないということを十分理解しておいてください。
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サトシ
なので、このブルンストローム・ステージによって判断できるのは運動の分離性(単関節が単関節として動かせるかどうかといった)についての評価が主の目的になるということになるのです。
ブルンストローム・ステージによる回復過程って?
では、実際にブルンストローム・ステージによる回復過程の変化は、臨床症状としてどのような形で現れるのかを、詳しくみていきましょう。
まず覚えておいて欲しいのが、この図になります。
これは末梢性及び中枢性(つまり脳血管障害などによる脳の問題によって引き起こされる)による運動麻痺の回復過程を表したものになります。
注目して欲しいのが中枢性麻痺の回復過程になります。
ここでは、この図における回復過程について段階を追って、もう少し詳しくおさらいしていきます。
StageⅠ:完全弛緩
完全麻痺(弛緩性麻痺)
発症初期によくみられる現象(急性期に多い)で、弛緩性とは随意的な筋収縮反応はみられず、かつ筋肉自体の緊張も感じ取れない状態のことを指します。
臨床的に別の検査方法として、腱反射などで筋の反応をみるケースがありますが、弛緩性の状態では腱反射は消失しています。
StageⅡ:連合反応・共同運動出現
連合反応の出現、共同運動(またはその要素)の最初の出現(=痙性発現)
連合反応として、非麻痺側の関節運動や筋収縮に付随して、麻痺側の筋収縮反応や関節運動が起こる状態を指します。
これは努力性に力を入れた際に(立ち上がりや起き上がりなどの)、本人の意思とは無関係に上肢の屈曲反応や下肢の伸展反応(その逆も)がでることが臨床上見られます。
あくびやくしゃみなんかでも出ることがありますね。
また腱反射は徐々に反応性を示し、場合によっては、亢進状態となることがみられます。
StageⅢ:共同運動パターン
共同運動またはその要素の随意的発現(痙性著明)
随意的な筋収縮は連合反応から、徐々に上肢・下肢ともに大きな関節運動として発展し、やがて上肢なら屈筋共同運動(伸展よりは優位に)、下肢では伸筋共同運動(屈曲よりは優位に)の2つのパターンが起こるようになります。
そして、原則この屈曲及び伸展といった共同運動パターンをはずれた、自由な運動を行うことはできないとされており、臨床的にはそういった現象を痙性パターンと捉えることが多いと思います。
ここでいう共同運動とは個々の筋のみの動作ではなく、それに付随する筋肉(例えば拮抗筋や補助筋など)も一緒に働いてしまう、といった現象も見受けられます。
StageⅣ:分離運動の出現
分離運動の出現、共同運動から逸脱した運動(痙性やや弱まる)
共同運動パターンによる特定の筋群が勝手に働いてしまう状態から、徐々に筋活動のコントロールが行え、個々の動作の分離運動が一部可能となる状態です。
臨床的な反応としては、肩関節と肘関節や、膝関節と足関節といった比較的隣接する部分の関節運動から徐々に分離運動が出現してくる印象です(全てではありませんが)。
関節運動としてはフル可動域はやや不十分(MMTで判断する筋力低下なども随伴して)ながらも、関節の分離運動が出現するといった動きになります。
StageV:分離運動の回復
分離運動の実行、共同運動や痙性は減少
共同運動から各関節が独立した分離運動(痙性減少)が可能となる状態です。
臨床的にはみかけ上、関節運動が可能ながらも少しぎこちなさや滑らかな動きが障害しているような印象です。
稀に努力性の随意運動を伴うと、共同運動まではいかないような筋の同時収縮やパターン運動がみられる場合などがあります。
StageⅥ:分離運動の獲得
分離運動の獲得、正常運動に近づく
共同運動からは完全に独立した分離運動が可能となり、協調運動もほとんど正常にみられる状態です。
そのため随意的に各関節運動のコントロールが可能となり、分離性の問題はほぼみられません。
やや動作スピードは低下(非麻痺側に比べると)している要素は見受けられるも、巧緻性については日常生活レベルにおいては、ほぼ正常に近づいた状態になります。
以上が、ブルンストローム・ステージにおける基本的な回復過程の分け方になります。
まとめると、運動麻痺とは随意運動の障害になります。
そして、その随意運動を評価するのがブルンストローム・ステージになるのですが、ここで上記のステージ毎の評価でみてわかるのが、ブルンストローム・ステージはすべてが分離運動を評価している訳ではないということです。
StageⅠ、Ⅱにおいて関節運動は伴わず、また非麻痺側の運動に伴って起こる筋肉の反応性をみている検査になります。
すなわち、この段階では随意運動を評価しているわけではなく、運動に伴う筋緊張の変化をみていることがわかります。
そして、その後のStageⅢ~Ⅴにおいては随意運動が出現し、それに伴う分離性を評価していることになります。
最後のStageⅥにおいては、分離運動の障害はほぼみられず、スピードを求めた協調性の検査になります。
なので、各ステージで評価しているものが違うということを理解しておくことが大事になってきます。
- StageⅠ、Ⅱ:動作に伴う筋緊張の要素を評価
- StageⅡ~Ⅴ:各関節運動に対する分離性の評価
- StageⅥ:運動スピードを伴った協調性の評価
ブルンストローム・ステージの具体的な評価方法は?
次は、具体的に評価で用いるために各身体部位(上肢・下肢・手指)で分けてみていきましょう。
上肢
stage Ⅰ:弛緩性麻痺
stage Ⅱ:上肢のわずかな随意運動
stage Ⅲ:座位で肩・肘の同時屈曲、同時伸展
stage Ⅳ:
- 腰の後方へ手をつける
- 肘伸展で肩屈曲90°
- 肘 90°屈曲位での前腕回内・回外
stage Ⅴ:
- 肘伸展位で肩外転90°
- 肘伸展位で肩屈曲し手を頭上まで挙上
- 肘伸展肩屈曲90°程度での前腕回内外
stage Ⅵ:各関節の分離運動
下肢
stage Ⅰ:弛緩性麻痺
stage Ⅱ:下肢のわずかな随意運動
stage Ⅲ:座位、立位での股・膝・足の同時 屈曲
stage Ⅳ:
- 膝伸展
- 足底接地のまま膝屈曲90°以上
- 踵接地で足背屈
stage Ⅴ:
- 立位股関節中間位で膝屈曲
- 座位で股関節内外旋
- 立位で踵接地下での足背屈
stage Ⅵ:各関節の分離運動
手指
stage Ⅰ:弛緩性麻痺
stage Ⅱ:自動的手指屈曲わずかに可能
stage Ⅲ:全指同時握り、釣形握り(握りだけ)、伸展は反射だけで、随意的な手指伸展不能
stage Ⅳ:横つまみ(母指は離せない)、わずかな全指伸展
stage Ⅴ:
- 対向つまみ
- 円柱、球握り
- 全指の完全伸展
stage Ⅵ:
- 各指の屈曲と伸展
- 全指の完全伸展
ブルンストローム・ステージを用いる際に注意すべき点
確かにこのブルンストローム・ステージは評価方法としては簡便かつ、客観的な指標としても「この患者さんはステージ〇で」って情報交換すれば、ある程度の患者像はイメージや共感できるのが利点としてあります。
その反面、評価結果に対する妥当性や細かな部分における詳細な判定基準(例えばどこからどこまでがステージⅣで、どこからがステージⅤなのかといったような)は各々の検査者に委ねられる部分が多く、セラピスト間でも見方によっては評価した結果が変わることもあります。
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また運動の分離性を評価するには、あまりにも評価項目が少ないことも問題点として挙げられます。
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運動麻痺の評価に用いる上田式片麻痺機能テスト!ブルンストローム・ステージより優れているその理由とは?
臨床場面をみていると特に感じるのが、運動麻痺による身体運動の現れ方は本当に多様です。
それは脳卒中による皮質脊髄路の受傷程度によっても出てくる症状は変化しますし、そもそも運動出力における脳システムのこと、関節運動のこと、筋力や重力のことなどの要素は、このブルンストローム・ステージで評価するには不十分な点が多数あります。
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ブルンストローム・ステージを評価として用いる際は、運動麻痺の回復過程をある程度客観的に大きな枠で捉えられるものとして、イメージしておく方がよいのではないかと思っています。
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そのほかによく聞かれるのが、MMTのようにテスト(検査)肢位がとれない場合などはどうするのですかという疑問です。
サトシ
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これに関してもブルンストローム・ステージの本来の目的は、正しい肢位で行うということも客観的指標としては非常に大事ですが、それよりも大事なのが、運動麻痺の程度と回復過程を知るということです。
すなわち、その肢位がとれなかったから、ステージ〇とするのではなく、各関節運動を行った時にどういった運動様式を示したのか(例えば、肩の分離運動をみた際に、肘や手も曲がり、肩の運動なのに上肢がひと塊として動いてしまったとか、上肢と一緒に下肢まで力が入ったとか、上肢運動を体幹を大きく動かして代償していた、またその際に大きく姿勢が崩れたなど)を明確に把握し、その上で運動麻痺の程度を理解するとともに、そのヒトの運動パターンを知ることがとても重要な要素になってくるのです。
なので、ステージがいくつということより大事なことは、運動麻痺に対する検査においてもまずは、随意運動による動きを筋肉レベルでより詳細に評価する能力が必要になります。
サトシ
臨床場面では発症期間から経過が長ければ長いほど、二次的な関節可動域制限や筋力低下なども起こることがあるため、それらを明確に区別していきながら、運動麻痺を多面的に捉えることが重要です。
そして、そのための一つの評価方法として、このブルンストローム・ステージを用いることが、臨床場面で治療要素の一環として役立つ評価ツールになるのだと、個人的には思います。
ブルンストローム・ステージに関するまとめ
- 「運動麻痺の程度を知ること」と、「運動麻痺の回復過程を知ること」の2点を評価する際に用いる
- ステージⅠ、Ⅱの段階は筋緊張を、Ⅲ~Ⅵの段階では分離運動を評価している
- 評価方法に対しては検者の主観的判断に委ねられる部分が多い
- 運動麻痺の本質を理解していると、その評価方法も活きてくる可能性がある
といった事を理解しながら、是非普段の臨床場面でも活用して頂ければと思っています。
このブルンストローム・ステージでは評価が不十分になりますが、それを改良した上田式12段階片麻痺機能テストやその他の運動麻痺の評価法(SIASなど)も合わせて用いることをオススメします。
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