こんにちは、リハビリアイデア(@rehaidea)です。
運動実行において重要な領域としては運動指令を骨格筋に送る一次運動野と合わせて、その一次運動野に対して適切な運動情報を送る高次運動野の機能が重要視されます。
その高次運動野は一次運動野以外の皮質の運動領域として補足運動野と運動前野と言われるブロードマンエリアの6野に相当する2つの重要な部位があります(高次運動野はこれに帯状皮質運動野も加わった名称となります)。
運動がスムーズに調整されるために必要な高次運動野の機能ですが、その中でも視覚情報に対する運動に関与するのが運動前野になります。
運動前野は小脳との強い連結をもつことで、特に視覚的な情報入力に対して実際の運動情報に変換することで、筋活動の調整等に関わります。
またこの運動前野は視覚以外にも体性感覚情報などの感覚情報も加わることで、感覚と運動を関連付けて制御を行っているとされており、これらの部位の障害によって運動失調などの協調性コントロールに影響がでることもあり、運動プログラムを生成する上でも非常に重要な領域となります。
補足運動野:記憶誘導型運動に関わり、基底核との連結が強い
運動前野:視覚誘導型運動に関わり、小脳との連結が強い
今回はその中でも特に小脳との連結が強い運動前野についてをどのように脳画像から同定していくかについてまとめていきたいと思います。
- 運動前野の位置が理解できる
- 運動前野を脳画像から探すことができる
- 運動前野の血管支配領域が理解できる
それではスタート!
運動前野とは?
運動前野(ブロードマンエリアの6野)は前頭葉の領域として、帯状皮質運動野の背側、補足運動野の外側、一次運動野の前方に位置する領域になります。
この運動前野は、視覚情報に対する運動情報生成に関わり、その中でも空間的な位置情報に基づく座標変換的な側面と、感覚情報から動作への変換に関するルールに従う対応付けがある側面を持ち、前者を腹側運動前野、後者を背側運動前野と2つの領域に分けられます。
空間の座標変換…?ルールに従う…?なんだか少し難しい感じが。
もう少しわかりやすくまとめていくね!
例えばペットボトルへのリーチ課題を想定してみてください。
その中でまずは視覚的に見た情報に対して、自分に対してそのペットボトルがどの方向にあって、どの位置(高さ)にあって、どれぐらいの距離があってといった情報をまずは把握します。
これらがまず頭頂葉で情報処理されることで、物体の位置把握を行い、さらにその情報が運動前野に投射されることで、視覚でみた情報に対する運動情報が作られます。
さらに視覚的な情報処理の中ではリーチする物体(ペットボトルの形状など)に対して手の形を合わせる作業が必要になりますが、こういった物体の形に応じて運動情報に切り替えるためにもこの運動前野が関与することが言われています。
つまり、運動が実行される前にはこうやって運動前野が視覚情報を正しく処理できるから、滑らかな運動を可能にしているということだね!
目で見た情報だけでは運動につながらないから、一旦運動前野を経由することで、正しい情報に変換しているということですね!
そして、これをやっているのが腹側運動前野にあたる部位が担っているんだよ!
これに対して背側運動前野とは、【ルールに従って】運動を調整するということに関わります。
ここでいうルールとは、例えばわかりやすい例としたら、青信号なら進む・赤信号なら止まるといった視覚的な提示情報に対して運動が決められるということです。
つまり何からの感覚情報の入力に伴い運動が実行される、その過程において運動前野が関わり、さらにこれらの部位は前頭前野と連結することでその効果を発揮していくとされています。
- 機能的な違いから腹側運動前野と背側運動前野に分けられる
- 腹側運動前野は空間的な情報に対する運動変換に関わり、リーチなどにおける手の動きの形成に関わる
- 背側運動前野は決まった感覚情報のルールに従い、運動情報へと変換される
- これらは運動に先立って細かい運動制御を調整する
さらに詳しく運動前野の機能を調べるにはこちらも参考にしてみてください。
では、この運動前野を脳画像で見た際にはどういった位置関係にあり、脳画像からどうやって同定していくのか、そしてどういった血管支配があるのかについてまとめていきたいと思います。
運動前野がみれる脳スライスのレベルはどれ?
大脳皮質の中のブロードマンエリアだからみるべき脳画像はより表層に近い脳画像ですね!
そうそう!表層に近いということは脳の溝(脳溝)がみえる脳画像を探すということだったね!
まず運動前野がみれる脳画像を見つけていくのですが、大脳皮質のブロードマンエリアがみえる脳画像の領域はスライスレベルの一番上の脳のみぞ(脳溝)が多い画像を探します。
この脳画像のスライスレベルを頭頂レベルといいます
頭頂レベルのスライスをみる場合に、まずみるべきポイントは脳溝と脳回を把握するということです。
脳回・・・大脳皮質にある『しわ』の隆起した部分をいいます。脳回は1つ、ないし複数の脳溝によって囲まれています。
その中で、今回の運動前野を探す際に重要な頭頂レベルでみるべき脳回は中心前回(一次運動野)になります。
一次運動野の同定ができれば、次に一次運動野の前方にあり、かつ外側に存在する運動前野を探します。
運動前野を脳画像から探す:中心前回の同定
中心前回(一次運動野)の脳回を探すには中心溝をまず探します。
中心溝の前方に位置するのが中心前回(一次運動野:4野)になり、その前方(かつ外側)が運動前野(6野)になります。
その際にもうひとつみるべき脳溝が中心前溝で、この溝が一次運動野と運動前野を分ける領域の指標となります。
中心前溝の同定は片側半球を縦に分ける脳溝としての上前頭溝をみつけ、そこに交わる中心前溝を探します。
中心前溝の前にある脳回が高次運動野(一次運動野以外の皮質の運動領野)の領域となります。
さらに、頭頂レベルのスライスでは高次運動野の前方には前頭眼野がありますが、中心溝や中心前溝のような高次運動野と前頭眼野を分ける明瞭な境(脳溝)はありません。
高次運動野の外側が運動前野、内側が補足運動野になります。
背側・腹側運動前野の違いに関してはスライスレベルより頭頂レベルでは背側、その下の半卵円中心レベルでは腹側というように分けてください。
運動前野における血管支配領域は?
頭頂レベルでもう一つ重要な要素の中に血管支配領域があります。
このスライスレベルでは2つの大きな血管支配をうけ、内側を前大脳動脈、外側を中大脳動脈が血管支配を行っています。
高次運動野は外側に運動前野、内側に補足運動野が位置するということから、運動前野は中大脳動脈、補足運動野は前大脳動脈の血管支配が主となります。
つまり、中大脳動脈と前大脳動脈による脳梗塞では、大脳皮質のレベルにおける運動領域の損傷に違いがあるのがわかるね!
運動前野の同定のまとめ
- 脳溝が沢山ある頭頂レベルのスライスを探す
- 中心溝・中心前溝をみつけまずは一次運動野の領域を明確にする
- 一次運動野前方でかつ前頭眼野の後方にある領域が高次運動野(運動前野と補足運動野の領域)となる
- 運動前野は外側に位置する
- 運動前野の血管支配は中大脳動脈支配になる
運動前野は運動に関わる領域として視覚情報などの感覚情報を運動情報に変換する運動領野として非常に重要な役割を果たす部位です。
脳画像から同定していく際には一次運動野や補足運動野との関係性を理解しつつ、どの血管支配があるのかをイメージしていくことで、脳画像を見た際にそれらの領域の損傷程度を把握することが重要となります。
そしてこの運動前野はその部位単体の機能というよりネットワークの中で、小脳との繋がりなども考えながら臨床場面では身体機能と結び付けていくことが重要となります。
実行系に関わる一次運動野だけでなく、運動前野の機能もしっかりみることが重要になるね!
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