こんにちはリハビリアイデア(@rehaidea)です。
脳卒中患者さんの問題点において、セラピストが難渋するのが運動麻痺による随意運動障害ではないでしょうか?
そして、その運動麻痺を司る場所として大事になってくるのが、大脳皮質にある一次運動野の機能になります。
一次運動野の機能は?と問われると運動麻痺といった事が真っ先に頭に浮かぶと思うのですが、そのメカニズムは?と問われると中々細かく説明できていないセラピストも多いのではないでしょうか?
今回は、人の運動をコントロールする上で、最も大事な一次運動野(ブロードマンエリア4野)について、その基礎的な内容についてまとめてみます。
脳の大脳皮質には灰白質といわれる様々な神経細胞の核が存在します。
よく大脳皮質は〇野って言い方をしますが、あれってそもそも何なんですか?
一番イメージしやすいのは脳の番地みたいなものとして捉えてもらう方が良いかもね!
細かくいうと、これらの機能の違いは神経細胞の情報処理特性と関係しているとされています。
もう少し簡単にすると、地図帳を思い浮かべてみてください。
地図帳の中で番地が違えば、住んでいる人ももちろん違うよね。
脳もそれは一緒なのです。
つまり、〇野と△野と番地が違えば、それぞれの機能も異なるんだよ。
その中での我々人の身体運動に関わる領域(番地)として重要なのが、一次運動野(ブロードマンエリアの4野)にあたります。
じゃあ、この4野はどういった情報処理をしているかってことになるのですが、4野である一次運動野からは主に運動の出力情報が出されています。
なるほど、4野という番地には運動をする人がいるってイメージしたら良いですね。
このように脳の番地の機能を考える上で重要なのが、まずは灰白質、白質の関係性を知ることになります。
- 灰白質・・・核といわれる神経細胞が集まった場所となり、大脳皮質はそれぞれに〇野といった機能を持ち合わせている
- 白質・・・・〇野と〇野を繋ぐような神経線維の部分にあたり、この神経線維に沿って情報が流れていく
例えるなら、灰白質が『駅』の機能を持ち合わせ、白質が『線路』の役割を示すようなイメージです。
では、これらが脳の部位のどこにあたるかというと、
- 灰白質・・・一次運動野、大脳基底核、視床など
- 白質・・・皮質脊髄路、皮質網様体路、脊髄視床路など
になります。
一次運動野は灰白質の部分として、運動に関わる領域としては一番有名な場所です。
我々が運動するときに必要な指令は、この一次運動野が出発地点(駅)の役割をし、ここから脊髄を介して筋肉に指令がいく(線路)ことで我々は自由に手足を動かすことが可能になるとされています。
つまり、この駅か線路のどちらかが障害を受ければ、脳からの運動指令が筋肉にいかず、結果的に運動麻痺を呈するということになってきます。
では、この一次運動野(4野)は脳のどの部位にあるのでしょうか?
予後予測などを考える際にも重要な脳画像の見方についてみていきましょう。
まずは一次運動野の基本的な位置関係からみていきましょう。
脳画像をみる際に、一番初めに目にするのが大脳皮質の表面をみることができる頭頂レベルのスライスになると思います。
ここでまず見つけてほしいのが、一次運動野を探す指標にもなる中心溝です。
脳にはたくさんのシワがあり、そのシワによってそれぞれの領域が区分されています。
そのシワのことを脳溝といい、脳溝によって分けられた領域を脳回と呼びます。
脳溝・・・神経解剖学用語で、脳の表面にある溝、いわゆる『脳のしわ』にあたる部分です。
脳回・・・大脳皮質にある『しわ』の隆起した部分をいいます。脳回は1つ、ないし複数の脳溝によって囲まれています。
一次運動野の位置関係としては、脳を横からみた場合、だいたい脳の中央部(大脳皮質にあるしわの中心部である中心溝)の前方部分にあたります(図左)
脳を上からみた場合(脳をCT画像などでみた場合)に逆Ω(ひらがなのひの時にあたる部分)を呈する場所が中心溝(図右の赤線)ととらえられ、その前にある領域が一次運動野になります(図右の赤枠)。
『中心溝の同定』をもっと正確に理解したい方はこちら!
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一次運動野の体部位局在はこちら!
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じゃあ、一次運動野は脳の大脳皮質領域のどこにあたると思う?
大脳皮質には脳の区域を分けるための溝が多数存在し、それに応じて大きな4つの領域(前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉)に分けられています。
そして、この一次運動野が存在する領域は、前方の前頭葉の領域にあたります。
前頭葉の機能は主に、人の思考や行動に関わる機能を有しており、その中でも一次運動野はその名の通り運動に関わる部分になります。
では、もう少し細かな運動野の機能についてみていきましょう!
では、この一次運動野の機能を細かく見ていくよ。
実はこの一次運動野(4野)には小人が住んでいると言われています。
えっ、小人ってどういことですか?
一次運動野の領域には、さらに細かく手を動かす部分や足を動かす部分といったように、運動に必要な体の部位の情報が規則性をもって並んでいます。
それを『ホムンクルス』といい、別名『脳の中の小人』と呼んでいます。
では、実際どんなものか見ていきましょう。
皆さんも一度は目にしたのではないでしょうか?
頭と手がでかくて、体と足が極端に小さい小人を!!
ここで見てほしいこととは、手と顔の領域を占める割合が大きいということなのです。
特に我々人間は手で物を操作したり、表情を巧みに使って意思伝達したりと、かなり大事な機能を手と顔に持ち合わせていると言われています(サルなんかの動物も比較的器用と言われますが、人間ほど器用には動かせません)。
なので、この一次運動野に障害がみられると、手や顔面の領域に強い麻痺がでることがみられるのは、それだけ脳の一次運動野を占める割合が多いからなのです。
それにより、手の回復にはかなりの時間を要するとされています。
確かに、運動麻痺の方は手の回復が遅いような気がします。
それに反して、麻痺があっても比較的歩けるケースって多くない?
あれは、歩くといった行為そのものが、あまり一次運動野の関与が大きくなく(全くないというわけではありませんが)、他の部分の関与が大きいとされているからなのです。
歩行に関わる重要な部位としては、姿勢コントロールにも関わる皮質網様体脊髄路の重要性が近年報告されています。
逆に、このホムンクルスが示すように、手や顔の領域が大きいということは、それだけ、脳でコントロールされやすいってことにつながります。
つまり、一次運動野にはこのようにその部位ごとに動かす機能が異なるということになります。
まとめると、一次運動野は主に手の機能について影響を受けやすいということが考えられます。
だから、一次運動野がやられる運動麻痺は手に障害が残りやすいんですね。
運動機能に重要な一次運動野ですが、損傷を受けた際は運動麻痺が生じるのですが、その際に臨床場面では何に気をつけるべきか?
運動麻痺に対するリハビリを考えた場合に重要なポイントを考えていきたいと思います。
一次運動野は運動を司る部分なので、そこに障害が起きると、もちろん運動麻痺が出現します。
一度損傷を受けた脳は完全には回復することは難しいとされています。
そして、そこを使わなくなると、どんどんその機能は失われます(いわゆる廃用症候群というやつです)。
しかし、近年ではこの運動麻痺に関してもある程度の回復の可能性があると、様々な報告がでてきています。
参考 脳損傷によって失われた運動機能を肩代わりする脳の変化を解明産総研ホームページリハビリによる運動機能の回復過程での脳活動の変化を調べた結果、回復時には残存する脳領域(運動前野腹側部と損傷近傍の第一次運動野)の活動が変化し損傷した領域の機能を肩代わりしていた。
産業技術総合研究所 HPより
ここでは、この一次運動野が障害を受けても、しっかりリハビリを通して障害部位を使っていければ、障害を受けた部分ではない他の領域がそれを担ってくれいている、と報告されています。
特にこの一次運動野という部分は他からの連絡線維を多く持つと言われおり、そういった部分が運動回復には重要とされています。
その中でも近年重要視されている部分が一次運動野の前方に位置する運動前野という領域になります。
運動麻痺にも関わる運動前野に関する機能はこちら!
運動麻痺にも関わる運動前野の機能を徹底解説!運動前野を治療に活かすポイントとは?
またその他にも、この一次運動野は前方(吻側部)と後方(尾側部)に分けられ、後方部分は感覚機能を有し、直接α運動ニューロンに接続するため、感覚機能との関連性も言われています。
つまり、一次運動野が働かない場合は、運動前野や感覚野を叩かせるためにもそれぞれの機能特性を理解した治療介入が必要になるということだね!
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脳画像から一次体性感覚野(3,1,2野)を探す方法とは?
運動麻痺の回復には、他の脳機能の活性化が必要だということですね。
その通り!だから残存機能を見つける上でも脳画像が重要になるんだよね。
- 大脳皮質のブロードマンエリア4野にあたる部分
- 運動出力の出発地点
- 一次運動野にはホムンクルスといった体部位局在が存在する
- 障害により最も影響が出やすいのが、手の領域である
- 一次運動野の障害では、他部位の機能を考慮した介入が必要
一次運動野の機能について、見やすくまとめた表もご覧ください。
名称 | ブロードマンエリア | 機能 | 機能障害により生じる現象 |
---|---|---|---|
一次運動野 | 4野 | 随意運動の出力 主な入力源:高次運動野、頭頂連合野、視床 皮質表面はⅠ〜Ⅳ層に分かれる 皮質脊髄路に情報を送る 体部位局在に分かれる(ホムンクルス) | 運動麻痺(対側) 痙性(末梢優位) 感覚障害(一部) |
こうやって脳の機能を細かくみていくと、見えてくる症状の変化やアプローチの参考になりそうですね。
まずは基礎的なベースを知っておくことが、何より臨床では大事になってくるからね。