こんにちは、リハビリアイデア(@rehaidea)です。
臨床場面で眼球運動に問題が生じているケースを見たのですが、どうやって評価したりすればよいですか?
よく臨床場面でも眼球運動が問題なのか?注意障害が問題なのかってよく臨床でも迷う場面があると思います!
注意障害に関わる半側空間無視に対する記事はこちら(有料記事)!
そもそも運動実行に関わる一次運動野(ブロードマンエリア4野)は四肢・体幹・顔面部分に対して骨格筋を動かす際に働く神経核ですが、眼球運動は同じように一次運動野が支配するのでしょうか?
実は眼を動かすのは別の領域が関係しているんだよ!
眼球運動をコントロールしているのって脳幹ってイメージがありましたが、それ以外にもあるってことですか?
眼球運動には脳幹にある脳神経核(動眼神経や滑車神経、外転神経など)が関与しますが、その脳幹自体に眼球を動かすといった情報を送るのが、大脳皮質におけるブロードマンエリアの8野である前頭眼野になります。
今回は眼球運動に関わる前頭眼野についてをどのように脳画像から同定していくかについてまとめていきたいと思います。
- 前頭眼野の機能が理解できる
- 前頭眼野の位置が理解できる
- 前頭眼野を脳画像から探すことができる
- 前頭眼野の血管支配領域が理解できる
それではスタート!
目次
眼球運動が起こるまでの流れ!
眼球運動に関わる前頭眼野の機能を考える前に、まずは視覚情報に伴う眼球運動発現の流れをまとめていきたいと思います。
運動が起こる(アウトプット)ためにはまずは情報の入力(インプット)が重要となる!
まずは視覚情報として捉えた情報は、視神経を介して視床の外側膝状体を通り、後頭葉にある視覚野に送られる。
その後、形や色の情報を主に処理している大脳皮質側頭葉の方へ向かう経路(腹側経路:What経路)と、動き・位置・大きさなどを主に処理している大脳皮質頭頂葉の方に向かう経路(背側経路:Where経路)とに分かれる。
その中でも頭頂葉に向かう経路で得た位置情報を基に、実際にどこに眼球を動かそうかという目を動かす目標地点を選別し、前頭葉にある前頭眼野にその情報を送る。
そして前頭眼野は、目標の位置情報を眼球の運動情報に変換し中脳(上丘)や脳幹の神経核に送る
つまり、このような流れによって視覚情報として得られた入力情報から、実際の眼球運動に切り替えるために、前頭眼野が眼球運動をするかしないかを決める最も重要な大脳皮質であるとされています。
前頭眼野は眼球運動を司る運動野としての働きと一緒だということですね!
では、さらに細かく前頭眼野(8野)の機能をみていきたいと思います。
前頭眼野とは?
前頭眼野(ブロードマンエリアの8野)は前頭葉の背外側部に存在し、運動前野の前方に位置する領域になります。
この前頭眼野は、視覚情報における眼球運動に対する運動野として中脳にある上丘や大脳皮質にある補足眼野(ヒトでは補足運動野の中に存在する)に情報を送ることで、眼球運動に関わります。
この領域の特徴としては、電気刺激に対して低い閾値(弱い刺激)では急速眼球運動(サッケード)といわれる、人が通り過ぎたりするとパッと視線がそちらに向くような反射的な眼球運動が誘発されます。
よくリハビリ室でも人が通るとパッと目がそれる患者様多くいるもんね~!
また、左右の眼球を同じようにある方向に向けて追従して動かすような滑動性眼球運動(共同性眼球運動)が生じることも報告されています。
- 急速眼球運動(サッケード)
- 滑動性眼球運動
つまり前頭眼野の障害では反射的に視線をかえるための目の動きと、対象物に対して両側の目を動かす機能がでなくなるということですね。
そうだね!
では実際に前頭眼野を脳画像から探していきたいと思います。
前頭眼野(8野)がみれる脳スライスのレベルはどれ?
大脳皮質の中のブロードマンエリアだからみるべき脳画像はより表層に近い脳画像ですね!
そうそう!表層に近いということは脳の溝(脳溝)がみえる脳画像を探すということだったね!
まず前頭眼野がみれる脳画像を見つけていくのですが、大脳皮質のブロードマンエリアがみえる脳画像の領域はスライスレベルの一番上の脳のみぞ(脳溝)が多い画像を探します。
この脳画像のスライスレベルを頭頂レベルといいます
その中で、今回の前頭眼野を探すには運動前野・補足運動野を探します。
運動前野・補足運動野の同定ができれば、その前方に位置する前頭眼野を探します。
前頭眼野を脳画像から探す
頭頂レベルのスライスでは前方部分にみえるのが前頭眼野がありますが、実際は中心溝や中心前溝のような高次運動野と前頭眼野を分ける明瞭な境(脳溝)はありません。
さらに下のスライスである半卵円中心レベルでは、以下のような部位になります。
※脳画像は下記論文を参考に作成1)
H.R.Heekeren,et al:PNAS(2006), 27 ;103 (26) 10023-10028
ここでの特徴は補足眼野といわれる領域が内側に、外側に前頭眼野があり、どちらも眼球運動中枢として作用する。
これらの部位は実際には明瞭な境界線はなく、一部の報告では補足眼野は補足運動野内に存在し、上肢領域の前方に位置することも報告されています2)。
前頭眼野における血管支配領域は?
前頭眼野をみる上でもう一つ重要な要素の中に血管支配領域があります。
頭頂レベル・半卵円レベルの2つのスライスレベルでは2つの大きな血管支配をうけ、内側を前大脳動脈、外側を中大脳動脈が血管支配を行っています。
つまり頭頂レベルでは前頭眼野の支配領域は前大脳動脈と中大脳動脈のそれぞれにわけられており、下方の半卵円レベルでは前頭眼野を中大脳動脈が、補足眼野を前大脳動脈が支配していることがわかります。
実際の臨床場面では、血管支配というよりは実際に眼球運動を細かく評価していくことで障害の程度を同定するのが良いかもね!
前頭眼野の同定のまとめ
- 脳溝が沢山ある頭頂レベルとその下の半卵円レベルのスライスを探す
- 高次運動野(運動前野・補足運動野)の領域を明確にする
- 高次運動野の前方領域にあるのが前頭眼野となる
- 半卵円レベルでは外側に前頭眼野が、内側が補足眼野が位置する
- 前頭眼野の血管支配は頭頂レベル:前・中大脳動脈、半卵円レベル:中大脳動脈支配になる
前頭眼野は眼球を動かす際の運動領域として非常に重要な部位となります。
よく眼球運動の評価で脳幹機能があがると思いますが、そもそもその脳幹に情報を送るこの前頭眼野の機能も評価することが非常に重要になってきます。
その際には急速眼球運動であるサッケード(ヒトなどが通った時に反射的に視線をかえる機能)や両側の眼球運動を同じ方向に動かす滑動性眼球運動(共同性眼球運動)が出現するかを評価してみてください。
眼球運動に関わる脳幹機能だけでなく、前頭眼野の機能もしっかりみることが重要になるね!
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それではまた~!
脳画像におけるオススメ書籍
脳画像を学ぶためのオススメ書籍は下記のまとめ集から!
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引用文献
1)H.R.Heekeren,et al:Involvement of human left dorsolateral prefrontal cortex in perceptual decision making is independent of response modality. PNAS(2006), 27 ;103 (26) 10023-10028
2) Sumner,P et al:Human medial frontal cortex mediates unconscious inhibition of voluntary action. Neuron(2007), 54(5), 697-711.
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