今まで脊髄機能に関して3つの記事を通して運動において脊髄がもつ役割(特に骨格筋を動かす際のα運動ニューロンの働きについて)についてまとめていきました。
【脊髄編①】α・γ運動ニューロンって何?運動麻痺や筋緊張に関わる脊髄機能を簡単に解説! 【脊髄編②】伸張反射をどう臨床に活かす?機序やメカニズムをわかりやすく解説! 【脊髄編③】α運動ニューロンの機能特性から運動麻痺に対する治療アイデアを考える!そのα運動ニューロンと合わせて重要なのが、もうひとつの運動ニューロンとして脊髄前角に存在するγ運動ニューロンです。
確かに脊髄機能を勉強していくと、γ運動ニューロンって用語もよく出てくるけどいまいち機能を把握してないですね~
実はこのγ運動ニューロンの機能を理解するだけで、かなり臨床での応用や治療の幅が広がるんだよ!
今回はγ運動ニューロンがそもそも骨格筋に対してどういった作用を及ぼすのか、そしてそれが運動場面においてどういった役割をもつのかについてまとめていきたいと思います。
- γ運動ニューロンが何をしているかが理解できる
- γ運動ニューロンがどのように働くかが理解できる
- γ運動ニューロンの機能を臨床応用できる
それではスタート!
目次
γ運動ニューロンってどこにあるの?
脊髄には大きく神経線維が主に通る白質と、神経細胞が豊富な灰白質の2つの領域に分けられます。
そしてγ運動ニューロンはα運動ニューロンと合わせて灰白質である脊髄の前角に存在し、筋紡錘(錘内筋)へ神経線維を送る神経細胞になります。
同じ脊髄前角にあるけど、実はそれぞれ筋肉の中でも投射先が違うのが重要なポイントになるね!
α運動ニューロンは骨格筋の錐外筋に、γ運動ニューロンは筋紡錘(錘内筋)に情報を送るんですね!
投射先が違えば自ずとその役割も違うことがなんとなく想像できるね!
ここで重要なことは骨格筋に対してγ運動ニューロンとα運動ニューロンはそれぞれが違う働きをもつということを理解する必要があります。
α運動ニューロンは骨格筋の随意的な収縮様式に関わることは前回の記事にもまとめていますので、そちらをご覧ください。
【脊髄編③】α運動ニューロンの機能特性から運動麻痺に対する治療アイデアを考える!ではγ運動ニューロンは骨格筋に対してどういった作用をもたらすのかについて、γ運動ニューロンの神経細胞の特性も踏まえながら考えていきましょう!
γ運動ニューロンがもつ特性とは?
α運動ニューロンに比べγ運動ニューロンは細胞自体の大きさが小さく、さらにα運動ニューロンに比べ反応するための閾値が低い(活動を起こすまでの刺激量が少なくてすむ)のが特徴です。
それぞれの違いは以下の表のとおりです!
α運動ニューロン | γ運動ニューロン |
---|---|
投射先 | |
錘外筋へ投射 骨格筋の収縮に関わる |
筋紡錘へ投射 筋緊張に関わる |
細胞体の大きさ | |
細胞が大きい 沢山の刺激量を蓄えられる反面刺激閾値に達するのに刺激量が沢山いる(全か無かの法則) |
細胞が小さい 出力電位は小さく刺激の蓄えは少ない、その分反応するための刺激量は少なくてすむ |
細胞体の直径 | |
直径の太さは太い 8~13μm |
細い 直径の太さは3~8μm |
興奮閾値 | |
高い 反応するまでに時間を要す |
低い 刺激が伝わるとすぐに反応する |
それぞれの神経細胞を調べるのに役立つ参考書はこちら!
つまり少ない刺激量で細胞体が閾値に達し反応しやすいのは断然、γ運動ニューロンだということがわかるね!
一つ疑問に思ったのですが、そもそもγ運動ニューロンはα運動ニューロンと同じところから情報を得たりするのですか?
それ実はすごく重要な部分になるね!そもそも機能が違えば、情報の出どころも変わってくる可能性があるもんね!
では、具体的にこのγ運動ニューロンはどこから支配を受けるのでしょうか?
γ運動ニューロンはどこから支配を受けるのか?
ここでも対比しやすいようにα運動ニューロンと合わせて考えていきます。
α運動ニューロンは骨格筋の随意的収縮に作用する神経細胞として、随意運動に必要な脳領域から支配を受けます。
その際に働くのが脳にある一次運動野(4野)とそこから脊髄まで下行する皮質脊髄路によって支配を受けます(下記図の左側)。
それに対してγ運動ニューロンは主に大脳皮質の6野(運動前野や補足運動野)や脳幹にある網様体(青斑核、縫線核、脚橋被蓋核など)から皮質網様体脊髄路を介して支配を受けています(上記図の右側)。
この皮質網様体脊髄路が何に関わっていたか覚えてる?
随意運動に先行して働いたり、それに沿って(随伴して)働く筋活動の調整に関与していましたよね!
そして、これら脳の働きを考えた場合に、随意運動を実施しようとした際にはある順序性があります!
随意運動を行う際には、先ず運動に対する企画・プログラムを脳の中で作る必要があります。
例えば旅行にいくときも、何も予定を立てずに行くことってまずないよね!
つまり随意運動(旅行)をする際に、まずは前もってプログラム(予定を立てる)を作ることで、運動に必要な骨格筋の活動(これを予測的姿勢制御といい、その際に姿勢保持のための筋緊張変化)が起こります。
なるほど!ここでさっきの2つの運動ニューロンの違いを合わせて考えるんですね!
素晴らしい!よく気づいたね♪
元々の神経細胞の特徴からも運動情報が伝わる速度はγ運動ニューロンの方が早く情報が伝わり発火もしやすいです。
さらに、随意運動に先行して働くということは、一次運動野から皮質脊髄路を介したα運動ニューロンへの刺激よりも皮質網様体脊髄路を介したγ運動ニューロンの方が早く伝わります。
つまり随意運動を行う際には、まずは①運動プログラムが作られ、その段階で②各筋肉を働かせる指令がγ運動ニューロンから骨格筋に降りるということになります。
では、その随意運動(随意収縮)の前に筋が先に働くことで、どういった影響があるのかを骨格筋の特性を基に考えていきましょう。
γ運動ニューロンは筋の何に作用を及ぼすのか?
骨格筋をみていくと、本来筋収縮が起こる筋線維の集合体としての錘外筋(よくいう〇〇筋といったもの)とその錘外筋の中に存在する筋紡錘(その中に錘内筋)の大きく2つに大別されます。
この骨格筋(錘外筋・錘内筋)に対して投射するのが、
- α運動ニューロン:錘外筋を支配
- γ運動ニューロン:筋紡錘を支配
になります。
つまりγ運動ニューロンは骨格筋の筋紡錘に関与するんだよね!
では、この筋紡錘ですが、骨格筋にどういった作用を及ぼすのでしょうか?
筋紡錘とは、簡単にいうと筋肉の長さの情報を感知して、その情報を脊髄や脳まで情報を送る固有感覚受容器の一種になります。
それだけじゃなくて反射的要素もありましたね!
そして、この筋紡錘は大きく3つの部分から成り立っています。
- 筋線維の束(錘内筋):紡錘状の束
- 感覚神経終末(Ⅰa・Ⅱ):出力系
- γ運動ニューロン:入力系
この筋紡錘は入出力系をもつことで、骨格筋における筋活動の調節機能と感覚受容器の機能の2つを併せ持つ受容器になります。
そして、この筋紡錘の最も重要な機能のひとつに筋緊張の調整があります。
そもそも筋緊張って何だったか理解している?
正直筋収縮と何が違うのかが曖昧にはなっています。
そもそも筋緊張とは骨格筋のどういった状態を指すのでしょうか?
γ運動ニューロンが作用する筋緊張って何?
筋緊張は定義として、
- 神経生理学的に神経支配されている筋に持続的に生じている筋の一定の緊張状態
- 骨格筋は何も活動していないときにも絶えず不随意的にわずかな緊張をしており、このような筋の持続的な弱い筋収縮
とされています。
そして、この筋緊張を評価する評価バッテリーとして他動運動時の関節運動の抵抗感を評価するModified Ashworth Scale(アシュワーススケール)があります。
つまり、筋緊張は関節運動が行う際にも常に無意識に活動し続け、その関節運動自体をコントロールしていることがわかるね!
この持続的に起こる不随意の筋活動(筋緊張)によって、我々の骨格筋は滑らかに、かつ時には筋発揮を持続的かつ強力に起こすことに寄与しています。
イメージとしてわかりやすいのが、姿勢保持に働く筋肉ってずっと随意的に筋収縮を起こして重力に抗しているわけじゃなくて、不随意的に随意収縮より弱い活動で姿勢を維持することに働いているよね!
なるほど、だからそれを姿勢筋緊張っていうんですね!
そしてその骨格筋の収縮を引き起こしているのが、筋紡錘であり、それがγ運動ニューロンになります。
となると、骨格筋の収縮としての錘外筋の収縮(すなわちα運動ニューロンの働き)と何か違いがあるのですか?
よい疑問だね!ここで伸張反射のことを思い出してみて!
伸張反射とは、骨格筋が脊髄内とループをもつことで脳自体の活動がなくても起こる筋収縮方法の一つです(伸びたら縮むという反射で、まさにこれは不随意の活動です)。
筋紡錘が関与する反射機能はこちら!
【脊髄編②】伸張反射をどう臨床に活かす?機序やメカニズムをわかりやすく解説!
つまり、骨格筋の中にある筋紡錘が伸張されることで、その情報はⅠa線維・Ⅱ群線維を介して、α運動ニューロンに活動を起こさせるメカニズムです。
伸張反射のことだけ考えると、一度筋紡錘が伸びて、その後に骨格筋が縮んだあとは、筋紡錘も縮んでしまって情報をα運動ニューロンにもう送れなくなるよね?
そうですよね!それでは筋紡錘からの刺激で持続的に骨格筋が収縮するメカニズムを説明できないですよね?
その際に筋紡錘に対して情報を送っているγ運動ニューロンの働きが重要になってきます。
このγ運動ニューロンは筋紡錘に対して絶えず情報を送り続けることで、筋紡錘がどの関節位置やどういった筋の状態(伸びたり縮んだりしても)にあろうとも、常に筋紡錘の感度を調整するために働くのが特徴です。
つまり、常に筋紡錘が働きやすい状態にアイドリング(車がニュートラルな状態に入っている)しているというイメージだね!
これらの機能によって我々の骨格筋は無意識な状態でも、絶えず一定の骨格筋の弱い収縮による筋緊張(すなわち張力を持つことで)を調整することで、姿勢保持や随意運動を円滑にしているのです。
ちなみにこのαとγ運動ニューロンが組み合わさって働く機能のことをなんといったか覚えてる?
あ〜、αとγが連動して働いているからα−γ連関ですね!
α−γ連関については詳しくまとめた記事はこちら!
α−γ連関って骨格筋にどう作用するの?α−γ連関をわかりやすく徹底解説!γ運動ニューロンに関するまとめ
- γ運動ニューロンは脊髄前角に存在し、α運動ニューロンに比べ神経細胞は小さく、反応に対する閾値が低い
- 筋紡錘を介して筋緊張の調整に関わる
- γ運動ニューロンは大脳皮質の6野(高次運動野)から脳幹を介する皮質網様体脊髄路から支配を受ける
- 筋緊張は運動前(予測的姿勢制御)も運動中(随伴性姿勢制御)も絶えず活動を行うことで、関節運動しいては動きそのものを円滑にするのに役立つ
- γ運動ニューロンはα運動ニューロンと合わせて働くα−γ連関の機能を持つ
少なくとも随意運動を引き出す際にはα運動ニューロンにおける随意的な要素に目が行きがちですが、γ運動ニューロンにおける筋緊張コントロールを理解した上での治療介入がとても重要になってきます。
今回は脊髄機能として重要なγ運動ニューロンの機能について簡単にまとめてみました。
まだまだ脊髄機構は知らないといけないことが沢山あるので、また様々な情報を今後もアップしていきたいと思います。
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