こんにちはリハビリアイデア(@rehaidea)です。
臨床上、例えば足に体重をかけれない患者さんの問題点はと問われると、おそらくまず一番に挙がってくるのが運動麻痺の影響ではないかと思います。
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ただ、それと同様に体重がかけれないもう一つの原因に必ず挙がってくる問題点があると思います。
そうです。
それは感覚障害による問題です。
実際に、片麻痺患者さんの60%以上は感覚障害を呈するといった報告もされています(Carey LM.et al.1993)。
それぐらい、感覚障害と運動麻痺は臨床上問題点が混在する場合が多く、その問題点を明確に分けることは難しいかと思います。
じゃあ、皆さんはその感覚障害に対してもどういった評価をして、どういったアプローチをしていますか?
ただ手や足を触って、感覚が鈍いとか、感覚入力と言って、手全体や足の裏などの皮膚を触っているだけではないですか?
ドキッとされた方は是非もう一度、感覚について知識を整理しておいてください。
これを知るだけでも明日からの臨床的視点が変わると思います。
ここでは、一次体性感覚野について、より基礎的な内容について紐解いていきたいと思います。
目次
一次体性感覚はどこにある?
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脳にはたくさんのしわ(溝)があり、それにより様々な領域が区分けされています。
脳を横からみた時にだいたい真ん中にくるしわが中心溝にあたります。
そしてこの中心溝の後ろの領域は中心後回という領域にあたり、そこに一次体性感覚野が存在します。
中心溝の探し方はこちら!!
脳画像から一次運動野を探す方法とは?運動麻痺の評価の最初の一歩!
この一次体性感覚野は頭頂葉の最も前側に位置します。
この領域は一次体性感覚野(SⅠ)と表現され、狭義の意味での感覚野とされています。
一方、脳の中には、一次体性感覚野でとった情報をさらに伝達するために二次体性感覚野(SⅡ:ブロードマン43野)という、広義の意味で用いられる感覚野も存在します。
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脳の番地を示したブロードマンのエリアでいうと、前回の運動野は4野でしたが、感覚野は前から3野、1野、2野と階層的な領域が存在します。
そして、それぞれに機能をもっているのがこの感覚野の大きな特徴になります。
一次体性感覚野の機能について
サトシ
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入力系と出力系
一次運動野を出力系とするならば、この一次感覚野は入力系の機能を持ちます。
ここで理解しておいて欲しいのが、脳の中には情報を発信する部分と、情報が入力される大きく分けて二つがあるということです。
発信する方を脳から出ていく情報として遠心性(脳から遠くに離れていくイメージ)といい、入力される方を脳に入っていく情報として求心性(脳に向かって近づくイメージ)として表現される場合もあります。
この感覚野は情報が入ってくる部位であるため、求心路にあたります。
ではこの感覚野には一体何がはいってくるのか?
一次体性感覚野に入る感覚とは?
感覚野という名前の通り当たり前ですが、感覚情報が入ってきます。
サトシ
そういわれると、皆さんがイメージするところの五感がそれにあたるのではないでしょうか。
でもその五感すべてがこの感覚野に入るわけではありません。
その中でもこの一次体性感覚野に入ってくる感覚(ここでは感覚の入り口として3野の機能について限局します)としては、皮膚に触れたもの(触覚などの表在感覚)と筋肉・関節からの感覚(固有感覚)が主に入力されてきます。
皮膚からは主に触った時の感覚(触覚)や触ったものの固さ(圧覚)、動いているものの感覚(振動覚)などの情報が、体部位局在に基づいて脳に送られます。
その情報の特徴を分析することで、その刺激が何か(what)を認識しているのですが、一次体性感覚野だけでは実は何かを識別するだけの機能をもっていません。
また、筋肉や関節の動きに関しても、筋肉の伸び縮みや関節が曲がったりした情報、手足が動いたことによる動きの方向性などが、同様に脳の体部位局在性に送られ、自分の手足の位置がどこに(where)あるかを認識するのですが、ここも一次体性感覚野だけででは、それを認識することはできません。
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どういった情報かっていうと、単に「モノがあたった」という身体に対する外的な刺激や、「動いた」という内的な刺激に対して、3野にある神経細胞が単一的に反応するとされています。
ここでもう少し詳しく、一次体性感覚野の機能についてみていきましょう。
一次体性感覚野は3野だけではない
先ほども書いたように一次体性感覚野には3野、1野、2野と主に3つの領域に分けられています。
3野の機能
その中でも前方の3野はさらに前方の3a野、後方の3b野と言われる2つの領域に分けられます。
ここではそれぞれの部位における細かな機能についてもう少し詳しくみていきましょう。
- 3a野:筋や関節の受容器からの情報
- 3b野:皮膚の受容器からの情報
サルでの実験データになるのですが、サルの3a・3b野では反応を引き起こす皮膚領域(受け取る場所)が狭く、ある場所は触覚、別の場所は固有感覚というように、特定の刺激(感覚の種類)に対して、単純な入力に反応するとされています。
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では、皆さんが感覚と聞いてイメージしやすい手について考えてみます(脳の領域でも支配領域が大きく、日常生活の中でも感覚情報を必要としやすいため)。
前方の3a野は筋、関節からの情報をとるといったように、手においても、指に存在する筋肉の伸びた縮んだというような情報や、指の曲げ伸ばしに関わる関節の動きに対して反応しやすい部分になります。
皆さんが目をつぶっていても指を曲げたり、伸ばしたり(相手に動かされても同様に)しても、指が動いているのがわかるのはこの3a野がその情報をキャッチしているからなのです。
では次に、後方の3b野ですが、ここには皮膚からの情報が入ってきます。
こちらは指に何かが触れたといった情報や、指で何かを押したときの固いや柔らかいといった情報を伝える部分になります。
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1、2野の機能
これに対して1、2野では複数の部位にまたがった広い領域を持つ細胞が多く、刺激としてより複雑な情報に反応すると報告されています。
- 1野:指においては単指などの3b野より広範囲の皮膚からの情報を受ける
- 2野:多指や手全体、運動方向などの1野より広範囲の皮膚及び関節からの情報を受ける
例えば手指ならば、
3野では中指の指先という非常に狭い範囲にしか反応しない神経細胞がメインだったのに比較して、
1野に向かう間に単指、2野に向かう間には多指および手全体の動きや方向の選択のように複数の指節関節をまたぐ受容野を持つ細胞や、複数の指にまたがる受容野を持つ神経細胞があります。
つまり、3野→1野→2野と情報が進むに連れて、より広い範囲の複合的な情報を処理することができるようになるとされています。
そして、この1野と2野はその複合的機能から注意を向けることで、より入ってくる感覚情報の識別に関わるということが言われています。
また受容器においても、3野のように筋肉や皮膚の受容器というように限局されておらず、1野、2野では異なる受容器(筋肉からの情報もあれば、皮膚からの情報もある)からの情報が統合されていると考えられています。
サトシ
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一次感覚野にある体部位局在
一次運動野同様に脳の一次感覚野(主に3野にあたる部位)の中にもホムンクルスという小人がいます。
ホムンクルスについてはこちら!
一次運動野の機能について!!運動麻痺に関わるホムンクルスという体部位局在とは?
つまり、感覚野にもそれぞれの体部位局在に応じた神経が配列されています。
そしてそれは規則正しく並んでいるわけではなく、内側から足→体→手→頭という順番に配列されています。
そして、これも一次運動野と同様に、特に顔、手の領域が大きいとされています。
脳はとても効率的なものです。
リハアイデア
そうですよね、おそらく一番感じやすいのは手ですよね。
これって目をつぶっていても物を触れば、だいたいそのものがどういった感触かわかりますよね。
リハアイデア
そうです、顔ですよね。
でも必ずしも顔がすごくわかるかと言われればそうではないです。
あなたも昔よく言われたことはないですか?あ~、おかずつけてどこいくのって。
子どもやお年寄りなんかって口の周りにご飯粒がついていても気づかない人多くないですか?
それってただ単に目にみえにくい部分だからっていうのもあるんですが、実は脳って年齢によって使う容量・領域が少し異なってくるといったことも最近色々報告をされています(Hui He.et al,Front Aging Neurosci. 2016)。
【感覚野の機能】
年をとると触っている感覚も鈍くなる。
確かに臨床上感じる部分ですが、そこから老化も予測できるようです。年齢によって感覚野の機能の低下はやっぱりあるんだな。https://t.co/B8n9NsftXc pic.twitter.com/5W4mFsrAb6
— rehaidea (@rehaidea) 2017年8月20日
サトシ
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一次体性感覚野の障害を臨床的に捉えると
一次体性感覚野の障害により起こることはもちろん感覚障害です。
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そして感覚は脳と反対側に障害として現れます。
右の脳が障害を受けると、左側の身体の感覚(厳密には上・下肢の特に末梢部分)が、左の脳だと、右の上・下肢というように反対側に障害が出現します。
ここで大事になってくるのが、どういった感覚障害が起きるのかということです。
リハアイデア
そうですね、一般的なのはその部位をセラピストが触って、患者さんに触ってるかどうかを聞くあれですね。
サトシ
リハアイデア
サトシ
リハアイデア
う~ん、なんかとりあえず検査するみたいな感じで、正直あんまり考えたことがないですね…。
サトシ
では、それを臨床的な解釈の中で考えていくとなるとただ「触った」・「触ってない」や「動いた」・「動いてない」というような感覚検査ではなく、大事なのはその入った感覚をどう認識しているか(ここでの認識という意味は、言葉で表現する場合もあれば、体が刺激反応としてどういった筋肉の収縮を出すかなどの場合もあります)が大事になってきます。
それには脳の階層性について理解を深める必要があります。
脳のかいそうせい?なんだか難しい話がでてきましたね…(笑)
サトシ
皆さんは目をつぶった状態でもある程度触り慣れているものなら、それが何かは、見なくても理解できると思います。
そうすると、皆さんはまずスマホの全体的な大きさや重さ、固さなんかを頭で想像しながら触っていくと思います。
そして、だいたい手のひらサイズと分かった時点で、スマホの形はどうで、角は丸まっているのか、とがっているのかと色々触りながらさらに細かくその物が何かを感じようとします。
そして、最終的には自分が手にしっくり持てている感覚が、今までの記憶と統合されることで、「あ~携帯だったんだな」って把握できると思います。
そして、この何だったのかなって考えているときこそが、何かに注意を向けたり、いる、いらない情報の選別をしているときになり、より感覚野も反応するとされています。
つまり感覚検査においては、こういった情報処理をどのようにしているかを臨床場面ではより細かく評価するため、セラピストとしての観察力が非常に必要になってくるのです。
また、一次体性感覚野の治療においては、ただ感覚入力をしていくってだけでなく、どういった感覚をいれ、それをどう感じさせるかを考えながら治療していくことが重要になりそうです。
【情報を取りにいく】
臨床で感覚を入れるのではなく取りにいってもらう。
それにより麻痺が動きやすくなるケースの方がいる。なにも入力だけが感覚野の機能ではない。
情報を取りに行く際に生じる運動には感覚野が関与している。https://t.co/YXjb9VJcjS pic.twitter.com/Kp7YHzm3hd— rehaidea (@rehaidea) 2017年8月17日
一次体性感覚野のまとめ
一次体性感覚野の機能については、以下にまとめます。
サトシ
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大事なのは感覚検査などで「感覚障害をみつける」のではなく、どういった感覚をいれるかを脳機能から見つけることです。
是非日頃の臨床場面で、考えながら治療してみてください。
それでは、また!!
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