半側空間無視が出現する脳障害部位とは!?責任病巣は頭頂葉だけではなかった!

こんにちはリハビリアイデア(@rehaidea)です。

臨床場面で遭遇する半側空間無視ですが、視床出血や被殻出血、場合によっては大脳皮質の皮質下出血、中大脳動脈の脳梗塞においても出現するケースがあります。

では、この半側空間無視が出る出ないって、なんで患者さんによって違うのかなって気になることはないですか?

僕も新人の頃はよく迷ったよ。なんでAさんには半側空間無視があるのに、もっと重度なBさんにはないのって?

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そして、予後的にみたときにも良くなるケースもあれば、難渋するケースもあったり、本当にその病態は様々です。

また予後だけでなく、症状としてみたときも左の空間をわからない症状を呈する方もいれば、空間はわかるけど、モノ(例えば、食事の際のお皿)の左側だけがわからない方もいたりと、それぞれにおける予後や、でてくる症状もバラバラなことをよく経験します。

カスミ

まさに、今みている患者さんが、今後どうやってよくなっていくのか、果たして症状は改善されてくるのかって中々判断できずにいます。
家族様にもどうやって答えたら良いか本当に悩みます。

何故こうも患者さんによって半側空間無視といっても、それぞれに出てくる症状や予後において違いがあるのかというと、実はそれって、障害された部位(責任病巣)が違えばでてくる症状も違うということに繋がってきます。

ではそういったケースを担当した際に、どうすれば個々の患者さんに応じて症状を見極められるのかというと、一番重要でかつ簡単な方法がひとつだけあります。

カスミ

それ、すごく気になります。
それはずばり、問題となる脳機能部位を探すことです!!

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カスミ

あ~、だから脳画像なんですね!

やはり重要になってくるのが脳画像をどれだけ見ることができるのか、そしてそこからどのようにクリニカルリーズニングして、普段の臨床の中で患者さんの症状をみていけるかが絶対的に必要になってくるのです。

今回は、障害部位からみた半側空間無視の特徴について、それぞれどの部位の脳障害によってどういった半側空間無視の症状がでてくるのかという部分を解説していきたいと思います。

実はこれを知ることが、そのあとの評価や治療・アプローチをしていく際にとっても重要なヒントになるんだよ!!

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それでは、スタート!!

半側空間無視とは?

まずは、前回のおさらいもかねて半側空間無視とはということについて簡単に説明していくね。

より詳しく知りたい方は、半側空間無視の治療に必要な知識とは?大事なのは注意機能を理解すること!をご覧ください。

半側空間無視のリハビリに必要なメカニズムを徹底解説!無視ではなく注意障害という観点から!

半側空間無視とは、

大脳半球損傷の対側に提示された刺激を報告したり刺激に反応したり、与えられた刺激を定位することの障害1) (Heilmanら1993)

と定義されています。

そして、その障害は主に右半球の障害によって引き起こされ、左側の空間に対する障害を呈すケースが多いとされています。

カスミ

確かに、あまり右側の半側空間無視の方ってみないですもんね。
実際の臨床場面では、障害部位などによっても、右側にでるケースもあるので、そこは左側だけでは判断しないようにね。

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では、もう少しわかりやすく言うと、

半側空間無視とは
右半球の頭頂葉・前頭葉の損傷後に生じやすい神経学的症候で、無視空間に対して方向性に注意を向けたり、それを維持することが障害を受けた状態。

といったことになります。

では、この半側空間無視がどこの障害によってでてくるのかという部分を、具体的にまとめていきたいと思います。

障害部位からみた半側空間無視の特徴

まずは、脳のどの部位が半側空間無視に関係するのかという点で、脳卒中の障害部位の特性を踏まえた上で半側空間無視をみていきたいと思います。

メモ
これは患者さんそれぞれが障害を受けた脳部位を考える上で参考になる見方になります。画像をみることができない場合などには、情報提供書やリハビリサマリーなどの疾患名から半側空間無視を想起する際に是非参考にしてみてください。
半側空間無視が生じる病巣
  • 右側頭-頭頂接合部または下頭頂小葉
  • 中大脳動脈脳梗塞
  • 前大脳動脈脳梗塞
  • 後大脳動脈脳梗塞で視床後部の穿通枝梗塞を伴う病巣
  • 前脈絡叢動脈脳梗塞

などが一般的な教科書レベルではあげられています。

カスミ

う~ん、こうやってみると沢山ありますね。てかほとんどの部位で半側空間無視が出てもおかしくないような印象ですね。
それだけこの半側空間無視って複雑な病態だということを理解してもらえたら良いんじゃないかな。

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では、これら疾患ごとの患者さんにみられる半側空間無視の症状を脳画像を照らし合わせながらみてみたいと思います。

脳画像の見方が苦手な方はこちらもご参考にどうぞ!

脳画像におけるCT・MRIの見方!!みるべきポイントさえ押さえれば、脳画像は簡単に見れる!!

頭頂葉病変

半側空間無視が出現する部位としても、最も一般的でかつ臨床的にも多く遭遇するのがこの頭頂葉に障害部位をもつケースだと思います。

頭頂葉の機能としては、視覚や体性感覚、聴覚などからの各種感覚情報が集まり、それを統合する機能を有しております。

いうなれば、様々なフルーツをある程度の大きさにカットして、ミックスジュースを作るためのミキサーに集めるみたいなもののイメージで、そのミキサー(統合させるのが)の役目が頭頂葉だということになります。

そして、この頭頂葉の役割としては、特に空間感覚の指示・決定を担っています。

そのため、この部位の障害においては、視覚的感覚情報からくる知覚性の無視症状空間の中での左側への注意の切り替えが困難なケースが多くみられます。

以下は、実際の頭頂部位における脳画像になります。

頭頂葉は頭頂間溝を境に上方を上頭頂小葉、下方を下頭頂小葉と分けることができます。

それぞれの部位の特徴としてどういった感覚入力がされやすいかといった脳部位の特性を踏まえたうえで、半側空間無視における症状を見極めていくことが重要となります。

これら、頭頂葉の機能の違いとしては、上頭頂小葉は一次体性感覚野や一次視覚野からの情報が入力されやすく、能動的注意能力に関わってきます。

一方、下頭頂小葉は聴覚含めた多種感覚情報を受け取り、情報統合する部位となり、受動的注意能力に主に関わります。

能動的注意や受動的注意についてはこちらにまとめています。

半側空間無視のリハビリに必要なメカニズムを徹底解説!無視ではなく注意障害という観点から!

そのため、情報処理の中でどういった感覚入力が半側空間無視に影響を及ぼすかを、臨床場面ではしっかり見極めていく必要があります。

中大脳動脈梗塞

前述した頭頂葉を含み、それだけでなく、一次感覚野や運動野などの運動や感覚機能に関わる領域の障害も合併することが多くみられるため、無視による症状なのか、感覚機能による問題なのかは適切な判別していく必要があります。

また、障害部位が比較期広範囲となるため、半側空間無視における症状も慢性化しやすいケースが多い印象です。

半側空間無視としての特徴は、

身体周辺の空間領域(extrapersonal space)の半側空間無視は右前頭葉(腹側前頭前野、中前頭回)や右上側頭回病変で多くみられ、自己中心の空間(personal space)の半側空間無視は右下頭頂部(縁上回、中心後回)の病変で認める2)(Committeri ら 2007)

という報告もあるため、自己中心に対する空間の障害を呈し、車いす自操中に左側の壁にぶつけるなどのケースが多い印象です。

前頭葉病変

部位としては、前大脳動脈領域の帯状回や補足運動野などの前頭葉病変で生じることがあるとされており、症状として考えられるのが、視覚を用いた探索運動の障害が出現します。

視覚スキャンや視覚定位における左側の運動性の無視,方向性運動低下などの特徴を持ち,予後良好なことが多く,motor impersistence などを伴いやすい3)(前島ら 2001)。

また、背外側前頭前野による注意の分配性やワーキングメモリー(記憶の一時的な保持や処理能力)に関する問題も生じる場合があります。

臨床上での所見としては、左側への眼球運動がみられにくく、普段から頸部が右側へ回旋し、そちらに対して注意が逸れやすいケースがみられます。

後大脳動脈病変

後頭葉領域に関する問題により半盲や地誌的失認との鑑別が重要になる。

半盲の場合は、視覚情報そのものの処理が障害を受けてしまうため、そこからの視覚情報入力は困難となるため、代償動作の選択が必要になってきます。

こちらは実際の脳画像などと照らし合わせながら、無視による問題なのか、半盲による視野障害なのかはしっかり区別する必要性があります。

視床病変

視床には様々な大脳皮質の領域と結合する核が存在するため、その核の障害により、頭頂葉や前頭葉機能などにより出現する半側空間無視症状を呈する場合がある。

特に、臨床的にみてみても、視床でも後方の頭頂葉との連結が強い視床枕(Pul)の障害があるケースでは、半側空間無視を呈する場合が多い印象である。

しかし、その症状は直接的な症状に比べ予後としても慢性化しにくいともされ、

視床出血では血腫が少量でも半側無視を引き起こすことがあるが,限局した病変ではすべて一過性であった4)(Maeshimaら2002)。

との報告もされています。

また視床には意識レベルに関わる網様体賦活系の関与も重要になってきます。

半側空間無視の病態の根源には注意障害があり、その注意を作る上で大事な神経心理学ピラミッドにもある覚醒や発動性の部分にも繋がるので、そこも考慮した関わりが臨床をしていく上では非常に大事になってくる部分になります。

障害部位と半側空間無視の症状特性

カスミ

こうやってみると、半側空間無視といても、様々な部位によっても程度や症状の違いがあるということがわかりました。
だからこそ、その判別ってすごく難しく、臨床上も何が半側空間無視で何が違うのかはしっかり見極めていく必要がありそうです。

リハアイデア

そのためにも、そもそも半側空間無視とはどういった障害なのかという原点をしっかり考え、患者さんにみられる症状に対する仮説・検証作業からの治療プラン立案を考えていかないといけないね。

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以下では、脳の障害部位と半側空間無視との症状特性についてまとめていきます。

半側空間無視の病巣と症状の関係
  1. 頭頂葉病変:視覚的なイメージに伴う空間での左側の無視や、方向性運動低下(すなわち左側へ注意が切り替えられないといった)による右側の刺激から離れることが困難
  2. 中大脳動脈脳梗塞:重度な片麻痺や感覚障害、病態失認を合併
  3. 前頭葉病変:視覚を用いた探索活動における左側の運動性の低下や運動維持困難を伴う視覚の定位障害
  4. 後大脳動脈脳梗塞:左同名半盲、地誌的失認など合併(半盲との識別が重要になってくる)
  5. 視床病変:対側性の刺激に注意を固定できない、網様体賦活系による注意覚醒障害に伴う無視という特徴を持つ

このようにそれぞれの部位でも半側空間無視として出てくる症状は多岐にわたり、また類似した症状との鑑別も十分行っていきながら、半側空間無視を捉えていく必要があります。

そして、どういった機能の障害で無視症状がでているのかを見極める臨床力が非常に重要になってきます。

まずは目の前の患者さんをみるということ!

そして、そこからみられる症状がどういった脳の機能の中で引き起こされているかを考えることを心がけるのが、半側空間無視を知る上での第一歩になるのです。

それでは、また!

引用文献

1)Heilman KM, Watson RT, Valenstein E:Neglect and related disorders. Clinical Neuropsychology, 3rd ed, Heilman KM, Valenstein E (eds), Oxford University Press, New York, 1993, pp.279-336

2)Committeri, G.,et al.:Neuronal bases of personal and extrapersonal neglect in humans. Brain, 130 : 431 -441, 2007. 

3)前島伸一郎,坊岡進一,松本朋子,ほか:責任病巣.総合リハビリテーション,29:15 – 21,2001.

4)Maeshima, S., Ueyoshi, A., Matsumoto, T., et al.:Unilateral spatial neglect in patients with cerebral hemorrhage : The relationship between
hematoma volume and prognosis. J. Clin.Neurosci., 9 : 544 ─ 548, 2002.

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脳画像や脳機能に関してはPT領域では有名な阿部先生の書籍。
最新知見はもちろんのこと、半側空間無視だけでなく、高次脳機能障害に対する理学療法を実践するには是非一読したい書籍!

脳機能の勉強は正直これ一冊で十分。
半側空間無視に関しても、メカニズムから評価方法まで網羅されていて大変読みやすい書籍!

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